「今年のヒット商品ベスト30」(日経トレンディ2024年12月号)で「大谷翔平売れ」を押さえ堂々1位となったのは「新NISA&『オルカン』投資」。初心者向きの全世界株式投信に1兆8000億円が流入した。だが、まだ投資をやったことがない人や、投資を始めても何かとお金にまつわる不安を払拭できない人も多いかもしれない。
そんななか、世界600万部突破『サイコロジー・オブ・マネー』著者モーガン・ハウセルとゴールドマン・サックスCEOが絶賛する全米ベストセラーが話題となっている。世界的ベストセラー『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』(東洋経済新報社)の著者で、「世界最高のビジネススクール教授50人」に選出されたニューヨーク大学スターン経営大学院教授のスコット・ギャロウェイ著『THE ALGEBRA OF WEALTH 一生「お金」を吸い寄せる 富の方程式』だ。9社を起業した連続起業家でもあり、日本で「GAFA」という言葉を定着させた全米屈指の人気教授が明かす「世界最先端のマネー戦略、人生戦略」とは? 本書から抜粋・編集してお届けする(構成/ダイヤモンド社・寺田庸二)。
「怒り」の沸点が高いせいで
かなり損をしてきた人へ
私は自分の怒りの感情に手を焼いている。
怒りのせいでかなり損をしてきた。
これは遺伝でもある。
父は私にはあまり話をしなかった。
魅力的な人物で、激しい気質の持ち主だったが、ときどき予測できない怒りをあらわにした。
たいていの男の子がそうであるように、私は父に魅了されていた。
週末に車で迎えにきてもらったときは、助手席で父を見つめていた。
父は独り言が多かった。厳密には独り言ではなかった。
父はその場にいない誰かと話していた。おそらく職場の人だろう。
会話は次第にエスカレートし、押し殺した声で悪態をつき始めた。
父はいつも怒っていた。
私は怒りの感情が爆発すると、止まらなくなる。
40代になるまで、どこに行くときでも想像上のスコアカードを持ち歩いていた。
どんな些細なことであれ、誰かに無礼なことや敬意を欠くような態度を取られたとき、私はスコアカードに点数を書き込み、同じことを相手にやり返し、イーブンにしてやろうと思っていた。
なんというエネルギーの無駄遣いをしていたのだろう。
私と同じ間違いを犯さないでほしい。
誰かの行動で不愉快になったときも、相手の人生に何かが起きているかもしれないと想像してみよう。
その人は会社をクビになったり、離婚届を出したり、子どもが糖尿病だとわかったばかりなのかもしれない。
あるいは、本当に性格が悪いのかもしれない。
でも、そんなことでこちらが消耗するのはバカらしい。
些細なことや小さな無礼にいちいち反応する必要はない。
もちろん、これは言うは易く行うは難しだ。
ただ、怒りを表現すると、苦境から逃れやすくなる短期的なメリットがある。
不満を我慢して溜め込むと、怒りを爆発させるのと同じくらいデメリットになりうる。
ストイシズムの怒りに対するアプローチ
頭の中に、いつまでも怒りの種を住まわせてはいけない。
怒りに向けるエネルギーは、もっと建設的なことのために使おう。
ストイシズムの怒りに対するアプローチは、怒りの種に対して無関心になる感覚を養うことだ。
他人の行動はコントロールできないが、自分の反応はコントロールできる。
瞑想によって頭から雑念を消す人もいるが、私には無理だった。
その代わり、憎い相手を暗闇に放り込む訓練をした。
自分の心の闇の中に、相手を閉じ込めるのだ。
私は、金融アナリストのリン・アルデンの勧めに従い、「敵を敵だとみなさず、人間だと考える。相手には自分のことを敵だと思わせておけばいい。自分はその経験から学び、前に進む」という方法を実践した。
怒りを感じたとき、そこから何かを学ぼうと(「今回の出来事の一因は自分にもあるのではないか?」「この状況や人間関係は修復できるだろうか?」等)努める。
そして、これ以上自分には打つ手がないと思ったら、相手を暗闇に放り込み、二度とその人のことを考えないようにする。
「最高の復讐」の方法とは?
しかし、それだけでは必ずしも十分ではない。
暗闇の中に留まってくれない相手もいる。
だが、それでもかまわない。
今の私は、復讐の方法を知っている。
怒りにうまく対応できるようになったのは、今から25年前、ハミード・モガダム(プロロジス社CEO)の助言のおかげだ。
今でもその言葉が頭から離れない。
当時、私はセコイア・キャピタル社との数年間に及ぶ争いの真っただ中にいた。
つまらない人間という印象を持っていた同社のパートナーと戦っていた(前述のように私は自分の怒りをやりすごすのにとことん苦労していた)。
私の愚痴を聞いたハミードは話を遮り、「スコット、最高の復讐は良い人生を送ることだよ」と言った。素晴らしいアドバイスだ。
(本稿は『THE ALGEBRA OF WEALTH 一生「お金」を吸い寄せる 富の方程式』の一部を抜粋・編集したものです)