従来の人材育成では「叱ってこそ人は育つ」という考えが一般的であったが、現代では、メンバーのやる気を出すためにも「ほめる」マネジメントが欠かせない。ほめることは部下にこびることでも甘やかすことでもない。ほめることを通じて部下の成長を促し、成果を上げるために必須のテクニックなのだ。リクルートワークス研究所所長・大久保幸夫氏がそのコツを解説する。※本稿は、大久保幸夫『マネジメントのリスキリング――ジョブ・アサインメント技法を習得し、他者を通じて業績を上げる』(経団連出版)の一部を抜粋・編集したものです。
人材育成に必須ともいえる
「ほめる」マネジメント
メンバーのやる気を引き出すマネジャーの基本行動として「ほめる」という行動を取り上げる。
一昔前までは、マネジャーはメンバーをあまりほめなかったと思う。厳しく育てるというのが標準で、甘いことを言うといい気になって成長しなくなると考える人が多かった。年配の方は自分自身があまり上司からほめられた経験がないため、自らのマネジメント行動も「ほめる」より「叱る」を中心に組み立てるようになっていた。
しかし、人材育成のためにも、やる気を引き出すためにも、ほめるというマネジメント行動は欠かせないものである。私もあまりほめる方ではなかったが、異動してきたメンバーから「私はほめられて育つタイプなのでよろしくお願いします」というあいさつをされて、それ以来心を入れ替えて、ほめられる時にはなるべくほめるように心がけている。
あなたのこれまでの上司は、ほめるのがうまい人でしたか?ほめられた経験を思い出してみましょう。
有効にほめるためのポイントを整理しておこう。
まずは人前でほめるということである。1対1でほめるよりも、皆がいる前でほめた方が効果は上がる。それは誇らしい気持ちが足されるからである。
査定評価のフィードバックの時、良い仕事をしてくれたメンバーに対してはほめると思うが、それだと1対1の場に閉じて終わるので、別の機会に表彰する場や自慢話ができる場を設けて、人前で再度ほめてあげるとうれしい気持ちが大きくなる。
メンバーの向上心UP!
「ほめる」マネジメントのアイデア例
以下のようなアイデアが考えられる。
・上司への報告に同席させる
上司に報告する際には本人自ら説明できるようにお膳立てする。上司が部長から役員、社長となるほど効果は高い。メンバーに対して直接おほめの言葉をもらえるようにさりげない根回しをするのもよい
・成果発表会を開く
成果共有という名目で課内のメンバーを対象とした勉強会・成果発表会の主役にする。他者へのノウハウの波及、ナレッジマネジメントとしての意味合いもある