もうひとつのポイントは、具体的にほめるということである。ただ単に「素晴らしい成果を上げたね」とほめるよりも、どこが良かったかポイントを示し、「関係部署から反対された時に、資料をそろえて粘り強く交渉したね」などとほめた方が、うれしく感じるものだ(*1)。
*1 これを証明するものにホーソン実験がある。作業条件が生産性に影響することを検証しようという実験だったが、実験に参加しているということがモチベーションを上げてしまい、想定していた結果が出なかった
それは、上司がちゃんと見ていてくれたという思いが重なるからである。権限委譲して進めてもらっていたことについて、[ジョブアサイメント:進捗把握]や[ジョブアサイメント:見守り]を通じて、口は出さないが状況は見ているというマネジメントをした結果、具体的にほめるポイントが見つかる。それを伝えるので、「途中危なっかしいところもあったけれど、信頼して任せてくれたのだな」と思えて、モチベーションが上がるのである。
「ほめる」マネジメント上級者が
使いこなしている「ほめ分け」
2つのポイントである「人前で」と「具体的に」を心がければ、ほめ方は格段にうまくなるだろう。さらにクオリティが高いほめ方をマスターしたい人には、ほめどころの多様性を使いこなすことをお勧めしたい。
(1)才能をほめる……素晴らしい技術を持っているね、とても詳しいね
(2)行動をほめる……すぐに修正したのがよかったね、着手が早かったね
(3)価値観をほめる……いつもお客さまのことを第一に考えているね
(4)結果をほめる……これほどの大型受注になるとは思わなかったよ
(5)存在をほめる……あなたがいてくれて本当に良かった
このような「ほめ分け」ができれば、上級者と言っていいのではないだろうか。
ほめることは、部下にこびることでも甘やかすことでもない。ほめることを通じて意欲を喚起し、また成長を促すことであり、すべては業績を上げるためなのである。