上司が部下を「すぐに叱るべき」、たった2つのケースとは?【コンサルが解説】写真はイメージです Photo:PIXTA

コンプライアンスが重視される現代では、部下に嫌われたり、パワハラ認定されたりする事態を恐れて、部下を「叱れない上司」が増えているという。これまで、200以上の企業で組織開発の支援を行ってきた横山信弘氏は、叱る目的と叱る方法にポイントがある、と指摘する。相手の成長を促す叱り方とは?※本稿は、横山信弘『若者に辞められると困るので、強く言えません マネジャーの心の負担を減らす11のルール』(東洋経済新報社)の一部を抜粋・編集したものです。

部下が問題行動に走ったら
マネジャーには叱る責任がある

 あなたは、声を荒らげて部下を叱ったことがあるだろうか?

「しょっちゅうだ」と言う人もいれば、「ほとんどない」「一度もない」と言う人もいるだろう。

 おそらく、厳しく叱りたいと思っている人はいないはずだ。やむをえず、心を鬼にして叱りつける。とても負荷がかかることだが、マネジャーとしての責任を考えたら、そうせざるをえないと判断する。だから、やるのである。

 私は、部下の問題行動を変えるには、3種類の働きかけがあると考えている。

(1)叱る

(2)注意する

(3)指摘する

「叱る」ことを奨励する書籍など、今の時代、ほとんど見られなくなった。しかし場合によっては、部下を厳しく叱る必要もある。

 厳しく叱っていいのは、重大なリスクを相手が軽んじているときだけだ。リスクがあるだけなら、言って聞かせればいい。しかし、そのリスクの重大性を理解せず、軽視していると判断したら、厳しく叱ったほうがいい。

 いったん相手の思考を止める必要があるからだ。

 わかりやすい例でいえば、子どもが急流の川に近づいたときだ。

「危ない!近づくな!」と注意を促しても、

「大丈夫、大丈夫!」と言って聞かない。

 そういう場合は、「こらァァァァ!」と大声で叱るべきだろう。子どもがビックリして泣いてしまうかもしれない。そのせいで嫌われるかもしれない。だが、子どもの命には代えられない。

「一度溺れてみたらいい。そうすれば、川の怖さがわかるだろう」なんて、呑気なことを言ってはいられない。

徐々にではなく、
「即刻」叱るべき2つのケース

 では、社会人に対してはどんなときか?それは、

(1)取り返しのつかないことが起こるリスクを軽視しているとき

(2)「当たり前の基準」が下がるリスクを軽視しているとき

 の2つのケースがある。

 わかりやすいのは(1)だろう。

 30年以上前。高級レストランで、アルバイトをしていたときのことだ。ホール係として結婚披露宴の準備をしていた。その際、私が4枚の皿を一度に持っていこうとして、シェフに激しく叱られた。