教員が担う本格的な「ラボ」

ラボ教員も「ラボ」を担当、生徒と共に学ぶ 資料提供:千代田国際中学校
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――研究するという側面について、少しお話しください。

木村 世の中には、何が正しくて何が正しくないのか、現状の中で決めていかなければならない問題がたくさんあります。私の専門は生物学ですが、ゲノム編集を含めた遺伝子改変の範囲や遺伝子診断といった生命倫理の問題、遺伝情報の扱い方など、多くの課題が山積しています。

 世界を見渡せば、紛争に苦しむ人たちが大勢いますし、経済格差は開くばかり、地球環境は悪化の一途をたどっています。これらを解決していく方向性を決めていくのが私たちと子どもたちの世代です。何かを決めるときには知識が必要です。知らないと決められないからです。だから生徒にはたくさんのことを学んでほしいし、考えてほしい。考えるためにも知識が必要です。私たちが知っていることは何でも教えます。だから一緒に、自分もみんなも幸せになる未来をつくっていこう! と話しています。

――千代田の教員が担っている「ラボ」もあるのですか。

木村 本校の理科教員の中には発生工学や幹細胞生物学を専門とする教員がいて、その先生が生徒たちと一緒に「幹細胞ラボ」を立ち上げました。幹細胞ラボでは、筋肉の再生に関わっているサテライト細胞という幹細胞に注目していて、基礎研究と再生医療などの応用研究の二つの観点から研究を進めています。

 一方、マクロな視点で地球レベルの生態系や生命現象にアプローチする「環境DNAラボ」があります。こちらも本校の教員が自身の専門性を生かして研究を指導しています。生徒たちにどんな研究をしているか聞いてみると、「環境 DNA 分析という新しい技術を使って、深海にいるかもしれない新種の生物を見つけたいんです!」と楽しそうに話してくれました。

 医療を考える上で、治療の前に予防が大切ではないか、という話になったとき、ヘルスケアの観点が重要ではないかというアイデアを体育科の先生が出してくれました。普段からどのように体を動かしていけばいいのかを考えていけば予防につながるのではないかと。他の教員からは、地域医療における健康寿命の観点からもこのアプローチは大事ではないかという意見も出ました。これに興味を持ってくれる生徒がいたら、新しいラボが立ち上がりそうで楽しみです。