学ぶことが楽しいと思えるように
――嫌なことをやらされ続けていると、全部嫌いになりかねないですしね。
木村 生徒が学ぶことを楽しいと思えるようにしたい。勉強が嫌いになってしまったらおしまいなので、苦手克服だけではないアプローチとして、狭くてもいいからまずは自分が好きなことや得意なことを徹底的に掘り下げる。そして、そこから横に掘り広げていくアプローチを研究活動と教科との接続という形で実現してきました。
――そこで生徒の気付きがあると。
木村 深く掘っていく過程で、学ぶ楽しさが得られて、学び方も分かる。例えば、生物学が好きで、再生医療の分野で貢献していきたいという生徒は、研究を進めるうちに山中伸弥先生が初めてiPS細胞の樹立を発表した時の論文が読みたくなります。
学術論文は全部英語で書いてありますから、論文を読むために英語を学びたくなり、英語の授業を受ける姿勢が変わってきます。細胞の培養が始まれば、培養液を調整するためにモル濃度の計算が必要なので、理論化学について自ら学び始めるようになります。
このように、自分がやりたい生物の研究を進めるうちに、苦手なはずだった英語や化学もいつの間にかやりたいことに変わっていく。生徒の意欲を引き出していくことが学校の先生の役割です。教員が教科の枠を超えて生徒一人一人の学びのストーリーをつくるためにチームで取り組んでいく。これは意識的にやらないと実現できないものです。
――それが世界への貢献にもつながっていくというわけですね。
木村 生徒たちには、ことあるごとに「世界の未来をつくるのは君たちだって本気で思っている」と伝えています。学校説明会でも「受験生を募集しているというよりは未来をつくる仲間を募集している」と伝えています。千代田ではこれからも、生徒たちが自分もみんなも幸せになる未来をつくるために必要な環境を追求し続けていきます。