Z世代は、社会や他者への貢献意識が高く、応援したいと感じるものに消費する傾向がある。こういった応援消費(親近感消費)の共闘・応援の心理と、自身の投票が参加者の夢を叶える助けになるオーディション・システムの親和性が、INIの人気につながったといえる。

いつまでも推せるとは限らない…
低コスト低リスクのグッズも人気

 同様に、モノ部門1位の「Girls Planet 999」もファンからの投票で選考のふるいにかけられるオーディション番組で、アプリ部門5位の「UNIVERSE」を用いて視聴者投票が行われた。若者の「推す」心理にマッチしたといえよう。

 モノ部門5位の「トレカデコ」は推しのトレカ(名刺サイズの写真)を硬質カードケースに入れてラインストーンやシールを使ってデコレーションすることを指す。元々、推しのブロマイドや人形、アクリルスタンド等を持ち歩き写真に写り込ませる文化がオタクの間で成立しており、トレカデコもその派生といえるだろう。

 そのなかでもトレカデコが若者に選ばれる理由は、低コストで楽しめる点であると筆者は考える。趣味や興味が多くなるほど、オタ活(オタクの活動)にかかる消費は分散する必要がある。

 また、いつまで自分がそのコンテンツが好きかわからない(自信がない)のに、1つのコンテンツに対して支出を集中させることはリスクとなる。そのため、極力低コストかつ、自身の推しに対する熱心度を表現できる「トレカデコ」のような文化が、気軽に推しを応援できるツールとして広がったと考えられる。

 将来に対するビジョンが見出しにくく、かつストレスにあふれる現代社会を生き抜いていくうえで、消費者は現在志向になりがちである。帰り道に少し高めのコンビニスイーツを買ったり、ゲームセンターで楽しんだり、テーマパークで非日常を経験したりするなど、目の前にある消費を積み重ねていくことは、ご褒美となって、日々の活力や安寧感につながる。

 そのなかで、自分の好きなものを追求する推し活による消費は、自身の精神的充足につながる効果が高い。推し活をしている間はツライ日常を忘れることができる、したくない仕事を続けられるといったように、推し活による消費は、自身を甘やかすことにつながるのである。

 推し活に限らず、Z世代の消費は「自分の心を満たすものには消費は惜しまないものの、それを追求したいがためにその他の消費においては賢く消費を抑える」傾向があり、彼らの消費文化を読み解くうえでの重要な視点であると筆者は考える。