「推しのアイドルに胸がキュン」これって恋?→社会学者の答えが的確すぎた!写真はイメージです Photo:PIXTA

推しのアイドルのことを考えるとキュンキュンするけど、この感情は恋といっていいのか。知らない人に「ひとめぼれ」したところ、友人に「それは勘違い」と言われた……。恋愛や結婚は個人的なことなのに、社会のルールを気にしてしまうのはいったいどうしてだろう。10代の素朴な疑問に社会学者が真摯に答える。本稿は、大森美佐『恋愛ってなんだろう?(中学生の質問箱)』(平凡社)の一部を抜粋・編集したものです。

「推し」へのときめきは
はたして「恋愛」なのか

――私はアイドルにハマっていて、いつも「推し」にドキドキ、キュンキュンしてるんだけど、もしかしてこれって恋なのかな?

 その感情だけで恋と断定するには難しいですが、恋の可能性もありますね。

――ええ~!どうしよう、それってやばいよね。

 どうして「やばい」と感じるんですか?

――だって、アイドルと恋愛するなんて無理じゃん。私はリアルな人間には恋できないのかな……。

 ドキドキしたり、キュンキュンしたり、「好き」になる対象はいろいろあります。アイドルや芸能人など手の届かない存在もあれば、マンガやアニメなど二次元のキャラクター、モノに惹かれる人もいると思います。先ほど「推し」という言葉を使っていましたよね?

――うん、私の推しはアイドルだよ。

「推し」とは、好きな俳優やアイドル、スポーツ選手、作家など、その人がつくりだすものや活動を応援する意味で使われることが多い言葉ですね。彼らの活動にドキドキ、キュンキュンと惹かれ、夢中になって、応援するようになる。この「応援する」という気持ちが、推しへの「好き」という気持ちに近い表現かもしれませんね。友情や恋愛という気持ちだけではくくれない、もっと特別な感情なんだと思います。

――たしかに、推しの活動をもっと見たい、がんばってほしい、とは思うけれど「付き合いたい」とは思わないかな。でも私のオタク友だちは、わりと「ガチ恋」なんだよね。

 アイドルに本気で恋をしているかたがいるんですね。ただ私の考えでは、「恋」と「恋愛」はニュアンスが少し違います。恋は一方的に好意を寄せるもので、それ以上を求めません。しかし、恋愛は相手との関係性を深めたいという気持ちがあり、お互いにコミュニケーションをとりながら「関係性をつくっていく」ものです。なので、直接コミュニケーションすることができない相手と「恋愛をする」というのは、成り立ちにくいのではと思います。

――でも、「○○は私の恋人!」って疑似恋愛している友だちもたくさんいるよ?

 もちろん、恋愛感情を抱くこと自体は、個人の自由です。ただ「疑似」という部分を忘れてはいけませんよね。個人で楽しんだり、ドキドキしたりするのはいいけれど、あくまでも一対一の恋愛とは違う関係性です。