さらにメスの陰唇は、分かれずに融合した状態で膨らんでいるので、オスの陰嚢とそっくりの形状をしています。ブチハイエナの雌雄の生殖器官の写真が掲載された論文を見たことがありますが、両者はそっくりです。
オスとメスは固定的ではなく
進化の過程で変わっていくもの
なぜブチハイエナはこのような特徴をもつのでしょうか?
最も考えやすく、実際に研究されてきたのは、メスの男性ホルモン量がオスよりも多いのではないか?ということです。しかし、オスとメスの男性ホルモン量レベルを比較した研究は多数あるのですが、成長段階や時期によってホルモン量にも大きな幅があり、結果の解釈が大変複雑であるため、男性ホルモンが原因だとはいい切れないのです。
また、妊娠中のメスでは男性ホルモンが多く分泌され、それが胎児に作用してメスの子の生殖器官がペニス様に発達するのではないか、ともいわれています。しかし、男性ホルモンの作用だけでは説明がつかないという報告もされており、やはり男性ホルモンだけに依存した単純な話ではないようです。
ひとついえることは、このような雌雄の在り方が、ブチハイエナにとって適応的であった、ということです。実はブチハイエナのメスのペニスは、膣とつながった構造をしています。そのせいで難産であることが知られています。出産時、母子ともに死に至るリスクがありながら、おそらくそれを上回るアドバンテージがあり、ブチハイエナなりの雌雄の在り方が進化してきました。
つまり、オスやメスは固定的なものではなく、その生物の生態や環境、状況に応じて柔軟に変わっていく(進化していく)ものなのです。
ブチハイエナだけじゃない!
モグラのメスも「オスらしい」
さらに「オスらしい」メス、がいることが知られている哺乳類がいます。それは、モグラ、です。
哺乳類では一般的に、性染色体がXYだと精巣をもち、XXだと卵巣をもちます。しかし、モグラのグループのうち少なくとも8種では、XYのオスは精巣をもつのですが、XXのメスは卵巣だけでなく、卵巣の一部が精巣となっている「卵精巣」とよばれる生殖腺をもつことが知られています。しかも、一部のメスだけがこのように特殊な状態になっている訳ではなく、これらのモグラでは、メスは全ての個体が卵精巣をもちます。

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