ライバルがもたらす成長実感:
③協調性

 ライバルとは、勝敗を競い争うだけの間柄ではない。多くのものごとを共有し、ときに励まし合い、ときに助け合う存在である。それが本書の主張だ。
 成長実感の中でも、当然、その点は浮上する。

「ライバルと思っていた人から協力の申し出を受けたとき、この人は優秀なだけじゃなく協調性も持っているんだと思って。それ以来、自分もそこを意識するようになった」(30代後半・女性)
「やりたいこと、やるべきことを前に進めていくには、絶対に多くの人の協力が必要じゃないですか。ライバルと競うようになって、自分はその点が一番伸びたと思ってます」(20代後半・男性)

 ライバルから協調性を学んだり、ライバルに勝つために自ら協調性を鍛えたり。
 その根拠やプロセスは様々ながら、結果的に高い成長実感につながるのなら喜ばしい限りだ。

ライバルがもたらす成長実感:
④内省力

 ここでいう内省力とは「自ら振り返る力」と考えてもらえればいいだろう。

 義務教育の間は、主に振り返りは先生が主導してくれる。高校生になると、振り返りは徐々に生徒自身の取り組みの中に委ねられていく。そして大学に入ると、もう誰かが振り返りを手伝ってくれることはない。

 社会に出てからも、最初の数ヵ月、数年は、指導役が振り返りを促してくれるかもしれないが、ある程度経験を積んで独り立ちすると、そういった働きかけもなくなる。
 つまり大人になるにつれ、振り返りという行為は本人の意思の管理下に移行する。

 しかし多くの人は、成長のために必要な行為とわかってはいるものの、ついついやらずに流してしまう。
 だからこそ、「自ら振り返る力」、すなわち内省力の重要度は増す。いまや「内省こそ成長の源泉」と信じる人も少なくない。

「これまで振り返りなんてほとんどやらなかったんですが、一度経験してうまくできなかったことは、必ず次はやり遂げたいと思うようになって」(20代後半・女性)
「あるとき、勝手に心の中で目標にしていた先輩から、『ちょっと反省会を手伝ってほしい』って言われたんです。びっくりしたんですけど、次の日からは、こりゃ絶対自分もやらなきゃって思って」(20代前半・男性)

 個人的には、2つ目の20代前半男性のエピソードがとても気に入っている。
 目標型ライバルと目する人からこうお願いされて、断る理由はない。何より振り返りは、後輩の自分に頭を下げてでもやるべき重要なことなんだと、思うことができた様子。
 そして、そんな先輩の姿を見て、自らも実践してみようと思う。ライバルの挙動は、おのずとこうした感情を湧き立たせてくれる。

 読者の皆さんも、ぜひ自分の振り返りのお手伝いを後輩にお願いしてみてはいかがだろうか?
 内省力の向上のみならず、信頼関係の構築にも一役買ってくれるかもしれない。

(本稿は、書籍『ライバルはいるか?』の内容を一部抜粋・編集して作成した記事です)