ジャーナリストの池上彰氏、国民民主党の玉木雄一郎氏撮影:原貴彦

自民、公明両党は衆院選で過半数割れに追い込まれ、少数与党となった。キャスティングボートを握ったのは衆院選で「103万円の壁」見直しを掲げて躍進した国民民主党だ。「ゆ党」批判や参院選について、ジャーナリストの池上彰氏が玉木雄一郎氏に直撃した。(ジャーナリスト・池上彰 国民民主党・玉木雄一郎、構成/梶原麻衣子)

>>前編より続く

「自民党にすり寄っている」
という批判をどう受け止めているか

池上 国民民主党については、よく「ゆ党」と言われますよね。「よ党」でも「や党」でもない、その間の「ゆ」だと。与党に寄り過ぎていると揶揄(やゆ)する意図も含んでいますが。

玉木 確かによく言われるのですが、それに対して私はこう答えています。「政策実現にこだわって、時に与党にも協力してきた我々を民意が支持してくれたんです」と。私たちは結党以来、「対決より解決」を掲げ、政策本位の姿勢でやってきました。「野党じゃない、ゆ党だ」「自民党にすり寄っている」などといろいろ言われてきました。しかしそうした私たちの姿勢を見た結果、有権者の方に選んでいただいて、議席が4倍にまで伸びています。

 では、国民が私たちに求めているものは何か。純粋に民意と向き合った際に、何を期待されているかと言えば、やはり政策の実現です。現状、与党も野党も我が党を入れれば過半数を取れますが、私たちは野党のままで行く。

 例えば「103万円の壁」のような税制の話は、与党の自民・公明と協力して進めることが求められますし、一方で与党だけに任せていてはなかなか進まない「政治とカネ」の問題については、立憲民主党をはじめとする他の野党と協力して、政策活動費の廃止法案を提出しました。

「あっち行ったり、こっち行ったり、調子が良過ぎないか」と感じる人もいるとは思いますが、あくまでもそれは国民が我々に望んでいること。「自民、公明だけで決めるな」「でも反対ばかりして建設的ではない野党は困る」と。

 国民は国会が外交や安全保障を混乱させることは求めていません。選挙後、驚いたのは各国の大使がこぞって私の議員会館の部屋に訪ねてきたことです。自公だけでなく、国民民主党の外交・安全保障政策を教えてほしいと。

 私たちはあくまで野党ではあるけれども、大きな責任を負いました。与党の過半数割れが国益に反するようなことは避けなければなりません。だからこそ与党も、我々を含む野党の意見を広く聞いてほしい。これは政治史的に見れば55年体制以来、初めての状況なのではないかと思います。ですから「ゆ党」ではなく、何か新しい、よい名前を付けてほしいですね。

自公が党勢回復を目指して
衆参同日選挙を行うのではないか

池上 なるほど(笑)。英語で言えば「ハング・パーラメント」。つまりどの党の議席も単独過半数を獲得していない状況を指す言葉があります。そのまま訳すと「宙ぶらりん国会」になりますが、日本語ではまだありませんね。

玉木 まさにそうです。だからこそ、国会を空転させるのではなく、政策決定に責任を持って関与していきたい。

池上 これからの国民民主党の働きによって、結果的に名前が付くかもしれません。

玉木 そうなってほしいですね。

池上 2025年は参院選を控えていますが、衆参同日選挙で自公が党勢回復を図る可能性もあるのではないですか。