石破首相、「見直し」を表明
財源語らない減税公約が氾濫
来年度税制改正で「103万円の壁」問題での所得税減税についての自民、公明、国民民主の3党の税制協議がヤマ場を迎えている。石破茂首相は11月28日の国会での所信表明でも「壁」を見直す方針を語った。
先の総選挙で、自公の与党が過半数割れし、キャスティングボートを握った国民民主党が選挙公約でかかげた「103万円の壁」の見直し、所得税の基礎控除等の178万円への引き上げが税制改正でのメインイシューになった。
だが、大幅な税収減になることを恐れる財務省や、大幅な恒久財源の喪失が自治体サービスに影響を及ぼすこと懸念する総務省や地方自治体が反発、当面の政権運営の試金石ともいえる状況だ。
総選挙を振り返ると、この問題のほかにも、財源を語らない大規模な所得税や消費税などの減税を公約とした政党が大きく躍進した。この背景には、アベノミクスによる中間層の二極化が進んだことや、高齢者重視のシルバー民主主義への批判・反発がSNSを通じて拡散したことがあると考えている。
欧米でも格差問題や移民、エリートへの反発などによるポピュリズムの強まりがあるが、日本では、既得権益・エリートの代表として財務省が取り上げられ、「ザイム真理教」と揶揄(やゆ)するような議論や陰謀論が話題を集めている。
だが危険なのは、誤解も少なくはない感情的な議論でまじめな政策議論が封じられることだ。すでにその領域に入りつつある。
存在しない「103万円の壁」
所得税改革全体の議論が必要
そもそも「103万円の壁」問題については誤解もあり、議論が錯綜(さくそう)している。
国民民主党は、「手取りを増やす」として103万円の壁を取り上げた。所得が103万円を超えると、課税が発生するため、就業を抑制する結果、収入自体が増えないというわけだ。