あいまい語の多くは単語で使われる、つまり主語述語がない
――まずはその問いかけが必要だということですね。
木暮:あいまいな言葉のほとんどは、単語で出てきています。多くは「心理的安全性」とか「付加価値」とか「差別化」など単語です。つまり主語述語がないということ。だから何のことを言っているのか実際は分からないわけです。
だからこそ出てきたときにまず考えなければいけないのは、「なぜその言葉を今ここで考えるんですか?」ということ。そこを考えて初めて、「どういうことにつなげるのが目的なのか?」という発想に至る。そして「ゴールを明らかにすることが必要なのではないか?」と思うようになるわけです。
――そのゴールを明らかにするには、以前に教えていただいた「〇〇のために」を3回唱えていくプロセスが有効になってくるんでしょうか?
木暮:いえ、「〇〇のために」というのは行動に移してしていくための手法であって、この場合は自分が何をしたいのかを明らかにすることが大事です。「あなたは何をしたいんですか?」と聞かれている感じですね。単にそれに答えればいいだけなんですけど、ほとんどの方はそれが二の次になっているんですよ。
聞かれても答えられないリーダーにはなんと言う?
――聞かれても答えられないリーダーが多いのでしょうか?
木暮:答えられないですし、答えたとしても漠然としています。「付加価値って何のために考えなくてはいけないんですか?」と聞くと、「ビジネスのためだよ」とか「会社の将来のためだよ」とか。そこで「“会社の将来”にはいろいろありますけど、その中のどれでしょうか」と特定していかなければならない。でも、こういう質問をしたら多分、怒ってくる相手が多いでしょうね(笑)。
――そういう場合ってどうすればいいんでしょうか……?
木暮:選択肢を出すことです。基本的に相手が言語化できていないとき、アバウトなことしか言わないときは、選択肢を出すというのが常套手段です。
「付加価値を付けよう」と言われて、それが「会社の将来のためだ」と言われたら、「なるほど、それって売り上げ的な話ですかね? 知名度的な話ですかね?」と聞いたら、相手は「どっちでもない、採用の面だ」などとより特定された要素を言うはずです。
そこでもし「付加価値を提供している会社に、これからは人が集まるんだ」というようなことを言ったとしたら、「ああ、そっちなんですね」となります。そして「じゃあ、応募者が増えるような感じがゴールであって、そのために付加価値を上げていかなきゃいけないということですかね?」といった確認ができますよね。
―― 一気に具体的になりましたね!
木暮:まずは目的が整理されていない、あるいは整理されていても漠然としていて、世界地図広げて「ここに行きたい!」とざっくり指しているような状態なので、選択肢を提示して目的を絞っていく作業が必要だと思います。