車を覗く不審者写真はイメージです Photo:PIXTA

インド在住時に買ったばかりのジープを盗まれてしまった、山田真美氏。しかし、警察官は盗難証明書を出すのに「袖の下」を要求し、保険会社の担当は「保険金が下りるのは百年後」とのたまう。信じられないインド人たちの態度に対抗するために取った行動とは――。本稿は、山田真美『インド工科大学マミ先生のノープロブレムじゃないインド体験記』(笠間書院)の一部を抜粋・編集したものです。

インドの祭り「ホーリー」の
夜に起こった「自動車盗難事件」

 インド全土で祝われる祭りの1つに「ホーリー」がある。春の到来を祝う祭りだが、この日には、相手構わず色水をかけてかまわないというトンデモナイ無礼講が許されている。

 血気盛んな若者たちがカラフルな色水を準備し、誰かの頭の上にぶちまけてやろうと手ぐすね引いて待っている。そんなところへノコノコ出かけ、むざむざ犠牲になるのはご免だから、例年、この日は家から出ず、静かに過ごすことに決めていた。

 ある年のホーリーの翌朝のこと。起床してカーテンを開けた瞬間、何かが変だと感じた。

 そこにあるべき何かがないのだ。よくよく目を凝らして、ようやく気がついた。

「あーっ、車がない!」

 信じられないことだが、買ったばかりのインド製ジープが、駐車場から忽然と消えていた。昨夜、寝る前に窓ガラス越しに見た時は、車は確かにそこにあったというのに!

 あとから知ったことだが、わが家の車が消えた、まさにその夜、同じ町内だけで計7台の新車が盗まれていた。手際のよさから見てプロの犯行で、盗まれた車はあっと言う間に山間部を抜け、ネパールの闇市場に運ばれて二度と戻らないだろうと、あとで聞かされた。