学長が「他に方法が?」と聞くと、ランチョーは、「あります。貼り出すのをやめてください」と言います。
ここでも順位を明確にし、競争を煽るやり方に疑問をもたない学長に、その問題の本質を鋭く指摘するのです。
ランチョーは、これを「分断」と表現していますが、階層間の分断はまさにカースト制の問題点なのです。
ヴァルナとジャーティで成り立つ
カースト制は二重構造の権力で発展
では、まずカースト制とはいったいどのようなものかを見ていきましょう。
カースト制の「カースト」は、ポルトガル語で「種族」や「血統」を意味する「カスタ」が語源です。その実態は、サンスクリット語で「色」を意味する「ヴァルナ」と、「生まれ」「血」を意味する「ジャーティ」から成り立っています。
つまり、カースト制とは、インドではヴァルナ・ジャーティ制のことを指します。この制度では、カーストは2000~3000あるといわれています。
さて、ヴァルナ制ですが、「バラモン、クシャトリヤ、ヴァイシャ、シュードラ」という、まさに私たちが世界史などで習ったカーストの4姓のことです。
ジャーティ制は、生まれにより決定されるもので、職業の世襲、同じジャーティ同士での結婚などの決まりがあります。さらに、他のジャーティとの食物の授受、共食は制限されています。
逆に、食物の授受、共食をするということは、同じジャーティであることを対外的に示すことにもなります。
また、ジャーティには序列があります。「浄と不浄」というヒンドゥー教の概念にもとづいたもので、そのトップがバラモンです。序列によって食べて良いものと悪いものなどが決められていますが、上に行けば行くほど浄性が高くなり、そのため食べられるものも制限されます。
たとえば、上位カーストの中には、にんにくやネギなどを制限されているカーストもあります。
カースト制は、バラモンが指導する宗教とクシャトリヤである王という二重構造の権力によって、そのシステムを発展させていきました。