インバウンド客で、回転率がダダ下がる可能性も

 しかし、彼らは文化的には先ほどのサラリーマン以上に長居をするのです。

 私個人の経験ですが、ニューヨークに滞在していたときにこんなことがありました。現地のビジネスパートナーの方が「人気のラーメン店があるので行きましょう」と誘ってくれたのですが、お店についたら順番待ちが3時間でした。

 一旦、お店の前のリストに名前と電話番号を書いておくと、席が準備できたら呼んでくれるシステムで、近くのカフェで延々と待つことになりました。

 そのお店、カウンターが10席ほどの小さなラーメン店なのですが、繁盛しているわけではなく来店客がビール片手に長居をしているのです。

 日本人からすれば麺が伸びてしまうとあきれるのですが、ニューヨーカーたちはずっと放置した丼からときたま思い出したようにちょびちょびと麺をすすって、それからまた隣の女性を口説き始めます。

 こんな顧客層がトリップアドバイザーを参考に『すきはな』に来店するようになったら、回転率はさらに下がる危険性があるのです。

 コンセプト的には漫画『孤独のグルメ』の主人公のようなおひとりさまのサラリーマンが、自分へのご褒美とばかりに月一回訪店してくれるような利用が確立してくれればビジネスとしては成功なのですが、そこに至るまでに紆余曲折があるのではないかというのが、新規事業のコンサル経験が多い立場で感じる難しさです。

将来の店舗数は「高円寺に出店できるか」で決まる?

 新橋の一号店が黒字化した次の段階の課題を挙げてみます。仮にこのコンセプトが成功した場合、何店舗まで拡大できるでしょうか。

 東京ではこのコンセプトであれば新橋のつぎに新宿、八重洲、六本木、上野、恵比寿といった繁華街への展開は可能でしょう。通な場所としては神楽坂や蒲田なども大丈夫かもしれません。

 ただ難しい場所もたくさんありそうです。たとえば若者の街の渋谷は難しいかもしれません。『すきはな』の価格帯だと年収500万円~1000万円のサラリーマンがたくさん歩いているような場所でないとお店が繁盛できないでしょう。

 象徴的な問いを提起すれば、若者にとってグルメの街である東京の高円寺に出店できるかどうかで将来の店舗数が決まりそうです。