大暴落が起きてからにしようと投資を先延ばしする。銀行や証券会社の利害が必ずしも自分と一致しないことに気づかず、言われるままに投資する。

いたってシンプルな
「優れた投資法」とは

 投資家が自らの首を絞める行動について非常に興味深いのは、それが「変わらない」という点だ。世代は変わり、投資家の顔ぶれは変わる。でも行動は変わらない。

 優れた投資法というのは、実はいたってシンプルなものだ。

 たとえば親が生まれたばかりの赤ん坊のために、1日1ドルをアメリカの株式市場に投資するとしよう。

 子供が20歳になったら親に代わって自分で1日1ドルの投資を生涯にわたって続ける。

 アメリカの株式市場が過去と同等の投資リターン、すなわち年率11.8%でまわったとしたら、この子供が65歳になったとき投資したお金はいくらになっているだろうか。

 答えは480万ドルだ。

 今度は2人目の子供が生まれたとき、親がすぐに1日1ドルの投資を始めず、子供が20歳になったとき自分で始めるとしよう。

 投資リターンが同じだとしたら、この子供が65歳になったとき、投資したお金はいくらになっているだろうか。

 答えは50万ドルをわずかに上回る程度だ。

 2人目の子供が65歳で引退するときに1人目の子供と同じ480万ドルを手にしたいと思えば、20歳から1日9ドル以上を投資しなければならない。

「シンプルさ」と「時間」が投資においてどれだけ重要か、よくわかるだろう。

 僕がこの例をおもしろいと思うのは、早く投資を始めることがこれほど大きな差につながるというのは、直感的にはわかりにくいからだ。投資を始めるのを先延ばしするのは、最もダメージの大きい過ちの一つだ。

「投資の落とし穴」を
避ける術を学ぶのが重要

 株式市場で凡人に勝ち目はない、と主張する人は多い。感情が邪魔をして凡庸なリターンしか得られない、資金はプロに任せるべきだ、プロにうまくやってもらおう、と。

 プロのサービスを利用することが悪いとは思わないし、大方の投資家にとってはそれが最善の道だとさえ思う。とはいえ自らの失敗から学習し、賢いふるまいを身につけ、苦もなく自己資金を投資し、プロの投資家よりも相場変動の影響を受けず、高いリターンを得ることは可能だと僕自身が証明している。