さらにパブライは、ウォーレン・バフェットと同じように投資対象が10銘柄を超えることはめったにないほど絞り込んだポートフォリオを構築しつつ、長年にわたって株式市場で輝かしい投資リターンをあげてこられた理由を説明した。興味を持った企業の財務諸表を徹底的に研究し、投資すると決めるまでは経営者とは話をしないという。相手の魔法にかけられたり、セールステクニックに騙されたりするのを避けるためだ。
最高の投資家が教えてくれた
オススメ銘柄の悲惨な末路
ちょうど投資ポートフォリオに加えたばかりのある会社に話が及ぶと、パブライは興奮を隠さなかった。
亜鉛のリサイクルに特化したホースヘッド・ホールディングスという会社に数百万ドルを投資した、とパブライは説明した。亜鉛は多くの産業プロセスに不可欠で、世界経済の拡大とともに需要が増大していた。
ペンシルベニア州ピッツバーグに本拠を置くホースヘッド社は、これから爆発的に成長するとパブライは私たちに言った。
「今5億ドルをかけて最新鋭の工場を建設しているんだ。北米にあんな工場はほかにない。景気回復の恩恵を享受する準備万端というわけだ」
ニコラ・ベルベ著、土方奈美訳
僕はパブライの話に感動した。彼の主張はどこまでも明確かつ論理的で、幼児だって信頼して迷わず貯金箱をカチ割るだろうと思えた。
「僕の運用資産の20%をあの会社に投資したらどうだろう」。その晩、自宅に車を走らせながら僕は考えた。
「いや、30%か?ホースヘッドというロケットに乗っかって成層圏まで飛んで行っちまおう」
あの日、一緒だった学生たちとは連絡を取り合っていないので、ホースヘッドに投資した者がいるかどうかはわからない。ちなみに僕は、結局投資しなかった。
その判断を後悔はしていない。パブライとの会合から数年後、ホースヘッド・ホールディングスは破産を宣言し、同社の株価は90%下落した。