投資の落とし穴を避ける術を学ぶのもまた重要だ。資産運用を誰かに委ねるとしても、それでもまだ失敗の懸念はあるからだ。手数料を払いすぎる、最悪のタイミングですべての資産を売却してしまう、次々と投資商品を乗り換える、大失策をする、忍耐力を失う、など。
優れた投資家になるプロセスを通じて、人間としても完成されていくとさえ言い切れる。その場で瞬時に反応することがかつてないほど求められる今日、何か起きたときに反応するまでにひと呼吸おく習慣を身につけることは非常に難しいが、重要だ。
市場には無限のトラップが潜んでいるようだ。手を替え品を替え、あるときは同時に、さまざまな手を仕掛けてくる。私たちを「自分って天才?」といい気にさせたと思ったら、とんでもない愚か者の気分にさせる。投資家を苦しませた翌日に喜ばせ、翌月には怯えさせるというのが市場のお気に入りのゲームなのだ。
目指すのは完璧な運用成績ではない。完璧な投資家などというものは存在しない。重要なのは落とし穴を避けることだ。
それでは投資家が最初にはまる落とし穴の話をしよう。「レアな真珠の神話」だ。
投資家がハマる落とし穴
「レアな真珠の神話」とは
失敗とは、やり直す機会にほかならない。それも前回よりもっと賢いやり方で。──ヘンリー・フォード
僕がこれまで会う機会に恵まれた最高の投資家の一人がモニッシュ・パブライだ。
1964年にインド・ムンバイの労働者階級の居住区で生まれたパブライは、その冷静さ、マハラジャを彷彿とさせるごま塩ヒゲの風貌、そして株式市場での輝かしい実績で知られる。
幼いパブライの両親は複数の事業を立ち上げたが、いずれも失敗に終わった。「両親がすっからかんになるのを何度も見てきた。すっからかんとは明日の食べ物を買うお金も、家賃を払うお金もないような状況だ。両親から学んだ一番重要な教訓は、何があっても動揺しないことだ」
19歳になったパブライはアメリカに移住し、コンピュータ・エンジニアリングを学んだ。1990年代にはコンピュータ・コンサルティングの会社を興し、その後2000万ドルで売却、ハーバード経営大学院に進んだ。以来、自らの投資ファンドで顧客から預かった5億ドルの資金を運用している。