景気低迷による消費者の買い控えで苦境に立たされている化粧品業界。主要商品は軒並み前年割れだが、おもしろいことに「ハンドクリーム」が売れている。ニベア花王によると、2009年の市場規模は前年比3%増の約130億円となった。

 売れている理由は2つある。

 第1に、新型インフルエンザの流行。昨年8月、真夏の最も売れない時期にもかかわらず、市場は対前年比22%も伸びた。手洗いやアルコール消毒をする機会が急増したことで、手が荒れやすくなった消費者がハンドクリームを買いに走ったのではないかと見られている。

 第2に、単価アップ。これまでのハンドクリームの売れ筋価格帯は600円以下。ところが昨年12月には約1200円もする仏ピエールファーブルジャポンの「アベンヌ薬用ハンドクリーム」がトップに立った。おしゃれなパッケージや使用感、肌改善効果による異例のヒットだ。

「“手”に対する女性の美容意識が高まっている」

 ハンドクリーム最大手のニベア花王マーケティング部・後藤芳子氏は、消費者の意識変化を指摘する。同社によれば、従来の主要ユーザーである30~50歳代に加えて、最近では20歳代のユーザーが増えているという。手荒れ防止だけでなく、手をきれいに見せるためのハンドクリームが人気を集めているわけだ。

 したがって、インフルエンザ騒動が一段落しても、ハンドクリームは売れ続けそう。ニベア花王は美白効果のある商品、資生堂はバラの香りのする商品を投入するなど、各社とも高価格路線に舵を切っている。このデフレ時代にも、まだ思わぬブルーオーシャン(未開拓市場)が残されている。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 前田 剛)

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