もし、上司から仕事と関係のないことを頼まれたら、あなたは断れますか? 人によっては「断ることで後々不利益を被るのではないか」と心配になって、断れない人もいるのではないでしょうか。こうした頼み事も含め、「これ、断っても大丈夫?」と思ったときにどうしたらいいかを知っておくのは大切なこと。本記事では、『それ、パワハラですよ?』の著者で弁護士である梅澤康二さんと、本書でマンガを担当した漫画家の若林杏樹さん、元エリート幹部自衛官でひどいパワハラに苦しんだ経験を持つ会社員インフルエンサーのわびさんの座談会の中で話された、「これ、パワハラ?」と思ったときの対処法などについてご紹介します。(文/神代裕子、ダイヤモンド社書籍オンライン編集部)

【あなたは断れる?】上司から「無茶な要求」をされたときの対処法【令和時代のパワハラ最前線】Photo: Adobe Stock

上司の依頼を断ると、後で不利益を被るのが心配

――本書に書かれているような、上司から「子どものお迎えに行ってほしい」といった仕事以外のことを頼まれた場合、「断ると後々何か不利益を被るのでは」と考えて断れない人もいるように感じます。どうしたらいいでしょうか?

梅澤康二(以下、梅澤):職場内で微妙な関係性を維持していく上で、判断に困るようなシチュエーションは発生すると思います。その場合は正直なところ、個々人の考え方や価値観にも関わってくる部分ではあるんです。自分なら子どものお迎えを頼まれたら、「私の仕事じゃないので行きません」と断ります。

心配なのはその後ということですが、その後、仕事を進める上でその上司から何か嫌なことをされたと感じることがあったとしても、それがお迎えを断ったことと関連しているかどうかはわかりませんよね。関連している可能性もあるけれど、無関係かもしれない。こちらから判断はつきません。だからわからないことを考えてもしょうがないと思うんです。

ここからが気の持ちようで、一番よくないのは、わからないことであるにもかかわらず「嫌がらせに違いない」などと思い込むこと。

判断のつかないことに対して「悪意がある」と思い込むと、すべてをそう感じてしまいます。だから、「外から判断できないことは気にしない」というマインドセットも大切です。

理不尽でなければ「仕事だから仕方がない」と思ってすればいいし、逆に「これは仕事じゃない」と思うなら自信を持って断っていいのではないかと私は思います。

【あなたは断れる?】上司から「無茶な要求」をされたときの対処法【令和時代のパワハラ最前線】梅澤康二(うめざわ・こうじ)
弁護士法人プラム綜合法律事務所代表、弁護士
東京大学を卒業後、大手弁護士事務所アンダーソン・毛利・友常法律事務所に入所。同事務所を退所後、弁護士法人プラム綜合法律事務所を設立。人事労務分野での経験は15年以上。パワハラについてのセミナー、紛争等の対応も行う

仕事以外の依頼は、自分が納得するかどうかが肝

――受け止める側のメンタリティーの強さも必要になりそうですね。

若林杏樹(以下、若林):私だったら、残業代が出るならお迎えに行っちゃいますね。子どもが好きだから楽しそうだし。でも、他の用事や自分が本当にしたくないことなら断ると思います。それに、好きな人からの依頼なら受けるけど、嫌いな人に対してなら「私の仕事ではないと思います」と言ってしまうでしょうね。

【あなたは断れる?】上司から「無茶な要求」をされたときの対処法【令和時代のパワハラ最前線】若林杏樹(わかばやし・あんじゅ)
漫画家
大河内薫氏との共著『お金のこと何もわからないままフリーランスになっちゃいましたが税金で損しない方法を教えてください!』(サンクチュアリ出版)は発行部数29万部突破のベストセラーに。「年収1300万円の婚活女子」としてネットニュースで話題になるなど、インフルエンサーとしても活躍中

わび:自分も若林さんと同じですね。まったく業務からかけ離れたことなので断るべきだと思う一方で、人間関係が良ければ受けてあげてもいいかなとも思います。さらに、残業代などの賃金が出るなら、なおハッピーといったところでしょうか。梅澤さんもおっしゃっていましたが、自分の中で筋が通っているか、腹落ちしているかどうかが非常に重要かなと思っています。

【あなたは断れる?】上司から「無茶な要求」をされたときの対処法【令和時代のパワハラ最前線】わび
Xフォロワー18万人超えの会社員
日常の気づきを語ったつぶやきが10万超えいいね!を連発するなど、ネットニュースでも話題の人物。自衛官時代の壮絶なパワハラ体験と人生を生き抜く知恵をまとめた『この世を生き抜く最強の技術』(ダイヤモンド社)は3万部突破のベストセラーに。最新作『人生から逃げない戦い方』(扶桑社)も話題/イラスト:死後くん

梅澤:一点補足すると、残業代が出るならそれは「仕事」です。仕事であれば、基本的には命じられたら従わなければなりません。

基本構造として、会社の雇用契約のもとでは、原則として上司は部下に一方的な指示や命令ができるので。だからこそ、私は「残業代は出ないけど、あなたの善意で迎えに行ってほしい」という依頼は断るべきだと思っています。あとは、職場とは関係なく、個々人が自分の人間関係の中でどう対応するかの話になってきます。