社内の人間関係に何を求めるかは自分次第

若林:個人の人間関係で言うと、例えば先輩から「みんなで旅行に行こうよ」と言われたときに、断るかどうかってすごく難しいと感じます。業務ではないけれど、職場の交流じゃないですか。だから、断ると不興を買いそうで断りづらいというシーンはけっこうあると思っていて。帰り道に食事して帰るのはいいけれど、旅行となると休日が潰れてしまうからどうしよう……といった悩みはありそうです。

梅澤:そういったことは結局、「職場にどこまで自分のライフワークとしての人間関係を求めるか」によるのだと思います。私自身、前の職場で仲が良かったメンバーとは今も仲がいいですし。

職場は仕事をする場ではありますが、当然、職場内で人間関係を構築したり友人にまで発展したりすることはあるはず。だから、そういうことまで含めて考えるのであれば、社員旅行やグループ旅行に参加してもいいと思います。

一方で、職場にそこまでは求めていない、職場以外で友人関係は事足りている場合は、無理に付き合う必要はありません。そこは自分の価値観やさじ加減を考えながら消化していく問題なんだろうと思います。

――自分の中でラインをきっちり持っておくのも重要なんですね。

梅澤:そうですね。だから「年に1回なら旅行に行ってもいいけど、毎月は行かない」などと、自分で決めるしかないと思います。

正しい知識とマインドセットで自分の身を守って

――部下の立場にあるみなさんへ、メッセージをお願いします。

若林:パワハラを受けて悩んでいる人はたくさんいると思います。でも、梅澤さんのおっしゃる通り、断るべきところはちゃんと断って、職場でどんな人間関係を構築していくかを自分で決めて関係性をつくっていけば、選択肢が増えて楽になるのではないかと思いました。

仕事だけをしに来ていると思うのか、仲間でワイワイしたいからプライベートも一緒にいたい人がいたら誘おうとか、そういったことを考えて判断していけるといいですね。ぜひ『それ、パワハラですよ?』で知識をつけたり、自分を守る方法を考えたりしてください。

わび:知識は武器になります。この本にも対策がいろいろ書いてあるけれど、知識が増えることで自分の身を守れるようになるのではないでしょうか。私も今だったら「この一線を越えたら撃ちますよ」という姿勢を見せられたと思います。

以前は、嫌なことをされても愛想笑いですませていたのですが、その結果どんどん病んでいってしまったところがありますから。

最初に「パワハラかな?」と感じたときに、きっちりと撃退しておくべきだったと思います。ただ、そういった対策をするためには、パワハラを受ける側も「知識」は持っておく必要があります。仕事上本当に必要なことまで「それ、パワハラです」と言ってしまうと、厄介な人間だと思われかねませんから。

梅澤さんがおっしゃるように、「どこまでが業務上必要なことで、どこからがパワハラなのか」を、管理される側もしっかり勉強する必要があると思います。私も振り返ると、しっかり勉強しておけば、あそこまでひどいパワハラにならなかったかなと思うことはあるので……。

梅澤:パワハラに関しては、「正しく嫌悪して正しく恐怖すること」が非常に大切だと思います。何が何だかよくわからない状況の中でハラスメントに相対してしまうと、必要以上に恐怖心や嫌悪感が増幅されてしまう可能性が高いと思うので。

わびさんがおっしゃるように、まず、自分がどのような状況になって、それはどのように整理できるのかを、正しく理解し、把握できるだけの知識を最低限持っておく必要があると思います。

仕方がないことですが、被害者は精神的に追い詰められると、思考がどんどんネガティブになって、先ほどお話ししたように、何かの事象ともう一つの事象を、客観的にはよくわからなくても、全部「自分に対する悪意的なもの」と捉えがちになってしまうように思います。

自分ではコントロールできないことは気にしすぎないのも大事なこと。意外と「鈍感力」も必要なんです。知識と心持ちの二つで自分の身を守っていってくださいね。