石田:これはね、井上に「お前ボケやねんから、明るい服着ろや」って言われたんですよ。そのとき、いやいや待てよと。このあいだお揃いのスーツを一緒に買いに行ったよな、なんで買ってから言うねん、と腹が立って、次の日、明るい色の中でも一番明るい真っ白で行ったという。以来ずっと白。はい、井上への当てつけです(笑)。

――コンビ間の人間関係がよくわかるエピソードですね(笑)。著書の中でも書いておられましたが、本気でお笑いを追求するからこそ、相方との関係は本当に難しいですよね。

叱咤激励とハラスメントは何が違うのか

石田:俺くらいの熱量を持ってやってくれよ、と言うのは簡単なんですが伝わらない。自分がどれだけやっているか、その姿を見せなしゃあない。そのうえで自分の心が折れるのか、それとも向こうがこっちを向いてくれるのか、賭けやと思うんですね。

 前向きな言葉で叱咤激励する方法もありますが、「並走しながらの前向き」はいいけど上から前向きな言葉をかけて無理させるのはハラスメントやし。並走することが大事で、やれることってそれくらい。相手の気持ちが減っていった時って、つい自分のほうが正義だと思ってしまうんですけど、忘れたらあかんのは、自分は大したことないってこと。

――相方やパートナーに対しては、距離が近すぎてついそれを忘れてしまうこと、ありますよね。

石田:僕は自分に期待し過ぎて、自分に溺れたことがあるんで。期待しているからこそ自分が相方よりも上の位置にいるつもりで、相手に上がってこいと期待してしまうんです。僕、プライベートで子どもが生まれてほんまに良かったのは、人間ってはじめは寝返りすらできひんのや、とあらためて感じたんですよ。

 どんなにできへんように見える奴も、ここまでめちゃくちゃ積み上げてきた。こいつ、頑張ってここにきたんやと。そしたら、頑張り方を知ったらできるはず。頑張り方を教えてあげよう、仕事の楽しさを教えてあげようって切り替えられるようになったんです。