生成AIを「使っている」または「使ったことが
ある」と回答した国民の割合

生成AIを使わない日本人、コストやリスクの偏重が社会の発展を妨げる要因に生成AIを「使っている」または「使ったことがある」と回答した国民の割合 出所:総務省「令和6年版 情報通信白書」(2024年7月)

 大きな話題を呼んだChatGPTの登場から2年、生成AIの進化は目覚ましい。当初指摘されたハルシネーション(もっともらしいうそ)を回避する仕組みやテキスト・画像・音声など異なるデータを組み合わせたマルチモーダル化、各社の生成AIによる性能競争などにより、日増しにその応用範囲や能力は高まっている。

 情報通信白書の生成AI利用に関する5カ国調査によれば、「使っている」または「使ったことがある」と回答した国民の割合は中国が最も多く56.3%だ。次いで米国が46.3%、英国とドイツが30%台で、日本は9.1%と低迷している。使わない理由を尋ねると、各国共通で「使い方がわからない」と「自分の生活には必要ない」が上位二つを占め、日本特有の要因は認められない。

 同じく企業の生成AI活用方針を4カ国調査から見ると、「積極的に活用する方針」と回答したのが、中国71.2%、米国46.3%、ドイツ30.1%だ。それに対し日本は15.7%とやはり最低だ。「領域を限定して利用する方針」の回答まで含めると、3カ国が80%弱から95%強であるのに対し、日本は42.7%と水をあけられている。業務利用に関していえば、3カ国が70%以上であるのに対し、日本は50%にも届かない。

 民間の日米比較調査を見ても、日本と米国では生成AIに対するマインドが異なる。生成AI活用指標の中で「生産性」を最重視するのは共通だが、次に重視するのが米国では「顧客満足度」であるのに対し、日本は「工数、コスト」だ。既存業務のコスト削減やリスク回避に目が向きがちな日本と、新しい技術を成長の原動力と捉えリスク対策を整備する米国という明白な違いが見えてくる。

 今回のマイナ保険証導入でも同様だ。日本では初期障害のリスクを過大視し、保険証を変えないことに固執する。コストやリスクばかり気にする国では新技術への関心も薄れ、イノベーションも生まれまい。リスクから逃げるのではなく、具体的なリスク対策を整備して成長の原動力にする姿勢が必要だ。

(行政システム顧問 蓼科情報主任研究員 榎並利博)