2023年6月、民間有識者による令和国民会議(通称「令和臨調」)は「外国人1割時代」に向けて危機意識の共有と政府の迅速対応を要請しました。1割とはすなわち1300万人を意味します。令和臨調をとりまとめた元総務大臣(現・日本郵政取締役兼執行役社長)の増田寛也氏は、その後も日本の急速な人口減少と地方都市の消滅リスクに警鐘を鳴らし続け、真正面から移民政策について議論すべきだと主張しています。

ビジョンなき移民政策の先に
予想される最悪のシナリオ

 政治が移民政策を議論せず、その都度、応急処置として外国人労働者の受け入れ枠をなし崩しに広げていくと何が起きるのか?相当にディストピアンな結末は想像に難くありません。

 以下は、リドリー・スコット監督の映画『ブレードランナー』に登場するロサンゼルスではありません。予想される最悪の日本の未来の姿です。

(1)まず、人口減に対する穴埋めとして数合わせのように移民が日本国内に入ってきます。自国より良い条件がインセンティブとなります。しかしそれ以上でも以下でもなく、日本への特に強い愛着はありません。日本としてもその人たちを期間限定の季節労働者とみなしているから、お互い様です。円が高くなれば移民に選ばれ、円が安くなれば見放されるというドライな関係です。

(2)日本側に付加価値をもたらしてくれるIT専門家や富裕層に対しては、長期の在留資格や税制優遇、家族の呼び寄せなどがおまけに付けられる。新たに設けられた経済特区では社会サービスもマルチ言語で手厚く対応していく。

(3)一方、キツい仕事や単純労働への従事者は、同等の日本人労働者を少し下回るぐらいの扱い(かつて3Kと呼ばれていた「キツい」「汚い」「危険」に加えて、最近言われている新3Kには「帰れない」「厳しい」「給料が安い」があり、それらを合わせて「6K」とも呼ばれている)。居住するのは家賃の安いエリアで、密集して暮らすようになります。日常で必要になるさまざまな手続きや医療関係の多言語化は遅れ、随所で混乱と長い待ち時間。国や行政に助けてもらえないと察知した移民たちはSNSで独自に情報交換、より断絶や分断が広がります。

(4)単純労働の移民が増えると、同等の賃金で働いてきた日本の非正規労働者、ギグワーカーの賃金がなかなか上がらなくなる。「移民ががんばっているからね」と会社に言われたギグワーカーなど低賃金で働く日本人は、移民に怒りの矛先を向けてしまう。