堀江貴文、ひろゆき、成田悠輔。先行きが不透明な今の時代に、破天荒な言動で若者を魅了する3人のカリスマだ。しかし、実際のところ彼らが発信するメッセージの中身は、新自由主義をベースとした弱肉強食の世界観でしかない。彼らに洗脳された信者たちは、どんな末路を辿るのか。※本稿は、モーリー・ロバートソン『日本、ヤバい。「いいね」と「コスパ」を捨てる新しい生き方のススメ』(文藝春秋)の一部を抜粋・編集したものです。
型破りな言動で若者の心を掴む
堀江貴文・ひろゆき・成田悠輔
2020年代を生きる若者は新聞を読みません。テレビを見ません。本当に見てないです。見ているのは昼も夜もスマホでネットだけです。そのネット上に強いプレゼンスを打ち出している「カリスマ」たちが毎日のように話題を振りまいています。
実業家の堀江貴文氏、「2ちゃんねる」創設者のひろゆき(西村博之)氏、経済学者でイェール大学助教の成田悠輔氏などは、小学生にも名を知られるほど広範に活動しています。そしてこの3人は頻繁に物議を醸す発言をします。その都度メディアも一般社会もその賛否両論を引き起こす発言によって揺さぶられ続けています。傍若無人でありながらスタイリッシュな美学が感じられるため、熱烈とも呼べる支持層がいます。
3人が頭角を現したタイミングはバラバラです。ひろゆき氏は2000年代初頭に匿名巨大掲示板「2ちゃんねる」が隆盛を極めた頃から名が知られるようになり、堀江氏はライブドア事件をはじめとし2000年代中盤から後半にその知名度はピークに達し、成田氏は2020年以降に『ABEMA Prime』などに出演してマスコミの寵児となりました。
各人とも型破りな言動が若者に大ウケしているのです。テレビを見なくなった若者に動画で直接訴求し続けるメッセージは案外広く深く浸透しているようです。
私も2023年にクラブDJとして遠征した地方都市で、20歳そこそこのミュージシャン青年に「モーリーさん、ひろゆきは知っておいた方がいいですよ」と説教口調で言われました。「いやあ、ひろゆきはちょっとね…」と反応したところ、「なんでですか?いいこと言ってますよ」と少し哀れみをこめた眼差しで一瞥されたほどです。その会話の後、青年は舞台に上がり、ギターを掻き鳴らしながら自分が社会のアウトサイダーであるという歌をシャウトしていました。
後日、都内で朝のラッシュアワーの時間帯にドトールコーヒーで仕事用のノートパソコンを開いた若いサラリーマンがいて、彼がブラウザにひろゆき氏の動画サムネイルを表示しているのがすれ違いざまに見えました。昨今は自分でニュースのリサーチをしている際にも、バナー広告の中にいるひろゆき氏が笑顔で追いかけてきます。