「マイ古典」を持つことで
心が強くなり、推進力が高まる

齋藤:今は情報の時代ですけれども、自分にとっての「座右の書」のような「マイ古典」を持っていない人が多いですよね。『学問のすすめ』は誰にとっても座右の書になりうると思いますが、このバタバタした仕事生活のなかでは、そういった古典を自分の中の軸として持つというのが、よりいっそうメンタルケアとしても必要だと思うんです。

鈴木:確かに打たれ弱い人が増えている気がしますが、古典を読むことで精神的に打たれ強くなる、ということはあるのでしょうか?

齋藤:すごくあると思いますね。そもそも僕は「心」と「精神」を分けて考えた方がいいと思っています。古くから伝わるいい言葉、つまり古典はいわば精神と同じです。心は自前ですが、精神というのは自分のものでなくて、福沢の言葉でも孔子の言葉でもいい。古典を自分の軸に持つと「言葉」の支えによって、心が強くなるんです。

 心を家に例えるなら、柱である精神がしっかりしていると家自体の耐震性が高くなる。今の時代は精神がなくて心だけ肥大化しているため、地震があったときに安定せず、激しく揺れ動いちゃうんだと思うんです。

鈴木:確かにトラブルが発生した時、若い人だけでなく、今は上司たちの中にも慌てやすい人が増えてきた気がしますね。でも「揺れない人」が組織にいなければ全員がパニックになり、当たり前のことを次の瞬間にできないはず。それは組織として非常に痛手だと思います。

齋藤:古典が持っている時間の重みというものも大切です。時代を超えて歴史上の偉大な人物と考え方を共有するということが、現代人に大局観を与えてくれると思うんですよね。

鈴木:上司が言ったことをそのままやっていれば不安を持たずに一生を送れるという時代は終わり、これからは不安を感じても自分で上手に消化して前に進める人こそがこの時代をサバイブしていけるんだと実感しますね。

 だからこそ、肥大化しすぎた心を精神で置き換えていくというのはとても大事なことですし、今起こっている問題に対して悩みを解決してくれるというか、心を強くしてくれるような「マイ古典」が威力を発揮するのでしょう。

齋藤:時代を超えてきた言葉というのは今読むと、「現代の問題に、なぜこれほどフィットするのか」とむしろ感動を持って受け取ることができると思います。こんな昔になぜ今の時代を予見していたんだろう、と。

 また、時代が移っても人間の本質は変わらないなと安心することもできます。もちろん、昔がすべていいというわけではありませんし、僕自身は社会全体として今の時代のほうがいいと思っています。でも、古典というのは基本的には前時代のいい部分を引き継いでいるものです。そういう「マイ古典」を持っておくと、問題に直面したとき、打開策を発見しやすいのではないかと思いますね。

鈴木:確かに「マイ古典」には、そういう威力がありますね。今日は非常に有益なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。(談)


新刊書籍のご案内

「超」入門 学問のすすめ

鈴木博毅さんが、『学問のすすめ』を現代の閉塞感と重ね合わせながら、維新の「成功の本質」を23のポイント、7つの視点からやさしく読み解く書籍が発売されました。歴史的名著が実現させた日本史上最大の変革から、転換期を生き抜く方法をご紹介します。変革期に役立つサバイバルスキル、グローバル時代の人生戦略、新しい時代を切り拓く実学、自分のアタマで考える方法など。140年前と同じグローバル化の波、社会制度の崩壊、財政危機、社会不安などと向き合う転換期の日本人にとって、参考となることが満載です。

ご購入はこちらから!→ [Amazon.co.jp] [紀伊國屋書店BookWeb] [楽天ブックス]

13万部突破!好評発売中!

「超」入門 失敗の本質

野中郁次郎氏推薦!
本書は日本の組織的問題を読み解く最適な入門書である

13万部のベストセラー!難解な書籍として有名な『失敗の本質』を、23のポイントからダイジェストで読む入門書。『失敗の本質』の著者の一人である野中郁次郎氏からも推薦をいただいた、まさに入門書の決定版。日本軍と現代日本の共通点をあぶり出しながら、日本人の思考・行動特性、日本的組織の病根を明らかにしていきます。現代のあらゆる立場・組織にも応用可能な内容になっています。

ご購入はこちらから!→ [Amazon.co.jp] [紀伊國屋書店BookWeb] [楽天ブックス]