「書店員が選ぶノンフィクション大賞2024」に輝き、販売数20万部を超えた文芸評論家・三宅香帆さんの『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社新書)。ビジネスパーソンに刺さるタイトルをはじめ、「歴史上、日本人はどうやって働きながら本を読んできたのか。なぜ現代の私たちは、働きながら本を読むことに困難を感じているのか」を丹念にひも解いた内容が多くの人を魅了している。そんなヒット作を生み出した三宅さんに、「好き」を仕事にする方法を聞いた。(ライター 正木伸城)

「好き」を仕事にするために
三宅香帆が取り組んだ意外なこと

――特に若い人の間では、「好きなことなら頑張れる。好きなことを仕事にしよう」といった論調が強い一方で、「好きなことだけで飯が食えるか」「好きなことを仕事にしたら、逆に好きではなくなってしまう」といった反対意見もあります。三宅香帆さんは文芸評論家として、まさにご自身の「好き」を仕事にされていますが、「好きを仕事に」的な風潮をどう思いますか?

三宅香帆三宅香帆/みやけ・かほ。文芸評論家。1994年生まれ。高知県出身。京都大学大学院人間・環境学研究科博士前期課程修了(専門は萬葉集)。著作に『(読んだふりしたけど)ぶっちゃけよく分からん、あの名作小説を面白く読む方法』、『推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない―自分の言葉でつくるオタク文章術―』、『副作用あります!? 人生おたすけ処方本』、『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』、『人生を狂わす名著50』など多数。

 私自身は今、「好き」を仕事にできて本当に良かったと思っています。ただ、これって運が左右することだと思うので、みんなが「好きを仕事にすべき」とは全く思わないです。

 これまで数えきれないほどの本を読み、書評をたくさん書いてきました。でも、最初から「書評家になろう」という夢があったわけではなくて。本当に、成り行きというか。

――その上で、好きを仕事にするために「これは大切だ」と思われているものはありますか?

 個人的には、副業や転職がいちばん近づける方法だと思っています。私も会社員をしながら、ずっと副業でやっていたので。副業が少しずつうまくいくようになったら、そっちにシフト、みたいな判断も全然アリですよね。