――スマホ時間が多い今だからこそ、読書をする魅力は何でしょうか?

 読書の魅力って、自分と関係のない話に出合えることだと思うんです。SNSって基本は自分がフォローしている人の情報が流れてくるわけですよね。文脈をある程度、共有している人たちの情報が流れてくる。

 でも、読書は自分と全然違う文脈の話にも触れられる。これを、ノイズだと感じる人もいるかもしれませんが、そういうノイズに触れることに意味がある。

 それに、読書をすると、1人になれるじゃないですか。誰にもつながらずに1人になれることがすごく大事。そのための読書、という理解がもっと浸透するといいなって思います。1人きりになった瞬間、仕事でいっぱいになっていた思考がフッと軽くなることもありますよね。

 あとは、シンプルに知識が増える喜びもあると思います。

「リアル書店」活用のススメ
会話の糸口は「好き嫌い」

――オンライン書店で本を買う人が増えましたが、リアル書店の価値はどう考えますか。

 例えば、Amazonで本を買おうとすると、どうしても自分が欲しい本にストレートに到達できてしまいますよね。あるいは、レコメンドの本ばかり提示されたりする。そうなると、本との出合いが限られてしまうと思うんです。

書影『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社新書)『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社新書)
三宅香帆 著

 でも、リアル書店なら、自分が買いたい本を手に取るまでにもたくさんの本との出会いがあります。そこには、全く予期してなかった未知の本との出合いもあるでしょう。書店に行くと、知識が手に入るような可能性の広がりを感じますよね。

――読書から、仕事で役立つことを得られるでしょうか。

 たとえば、「なんでこの人はこういうことを言うんだろう」みたいな人間関係の解釈が必要な時に、人生で読んでいる本が多いと、その解釈を言語化しやすいという利点はあるでしょうね。「あの小説にこういう人、いたな」みたいに。

――ちなみに、三宅さんは人とコミュニケーションを取る時に、気にかけていることはありますか。

 相手が好きなものと嫌いなものに興味があります。「この人は何が好きなんだろう。知りたいな」といった人への興味。「なんでこの人はラーメンがこんなに好きなのか」みたいな(笑)。

 そもそもラーメンとどう出合い、何がきっかけでラーメンが好きになったのかが知りたいです。そこに何か理由があるんじゃないかなって思います。