悪い予感は的中
依頼主が打った対策とは

 桑原さんに状況を報告して、まずは車が戻ってくるか確認するため、張り込みを開始しました。

 正午過ぎに、1台の白い軽バンが戻ってきました。車内には、作業に使うであろう脚立や道具がつり下げられている様子が確認できました。

 停車後すぐに降りてきたのは、作業着姿の矢永さんでした。駐車場から歩いて数分移動した後にトレーニングジムに入り、汗を流している様子が伺えました。

 1時間ほどして出てきた矢永さんは、歩いて数分移動したのちに銀行に入り15分ほど担当者と話したあと銀行を出て、近くのファミリーレストランに入りました。

 食事を取りながら、数枚の書類を書いているようでした。

 食事を終えコーヒーを飲みながらも書類を書き続け、1時間ほどして書き終わったようで、荷物をまとめてファミリーレストランを出たあと、駐車場に置いてある所有車に書類を置いて、歩いて1分ほどの自宅であろうマンションに入っていきました。

 所有車に置いた書類は外から見る限り、銀行の口座開設と融資に関する申請書であることが分かりました。

 矢永さんの新会社名も記載されており、実家に戻って家業を継ぐという話は虚偽であることが判明しました。

 翌日の調査では、元同僚と共に営業活動を行っていることが判明しました。

 営業に回っているリフォーム代理店の会社名や住所を桑原さんに確認していただいた結果、矢永さんの新会社が、桑原さんの会社の顧客やリフォーム代理店をターゲットにしていることが確認されました。

「顧客リストをコピーして桑原さんの顧客を奪いとろうとしているのでは?」という疑念が現実のものとなりました。

 この調査結果から、桑原さんは顧客リストのセキュリティーを強化して、顧客に対して注意喚起を行うことで、さらなる流出や被害を防ぐ対策を講じることにしました。

 さらには独立を希望する社員に対して支援をすることで、お互いの利益や機会の損失をなくして共生していくための協業関係の構築も進めていくことにしたそうです。