台湾積体電路製造(TSMC)が熊本に進出して以降、資金需要が先行しているのは不動産市場だ。既に工場周辺の地価はバブル状態だが、不動産需要は今後も継続するとの見方が根強く、熊本の地銀でも熾烈な競争が繰り広げられている。特集『新・銀行サバイバル メガバンク 地銀 信金・信組』の#18では、今後の熊本県周辺での不動産市場で主役になるだろうと地銀各行が注目する、新たなプレイヤーの存在を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)
半導体関連企業の需要はまだ先
不動産バブルに乗る“熊本地銀”
「地方銀行は台湾に拠点を置くなど、台湾積体電路製造(TSMC)の熊本進出に合わせ動きが活発だが、今はまだ半導体関連企業の資金需要を奪い合う状況ではない」
そう話すのは、日本貿易振興機構(ジェトロ)熊本事務所の水野桂輔所長だ。ジェトロ熊本は2023年9月、半導体企業の熊本進出を支援する「熊本・半導体分野等外国企業支援デスク」を開設した。
その後1年で約30社への個別支援をしているが、実は半導体関連企業以上に、機器の保守、不動産、排水・配管、クリーニングなど周辺サービス関連企業が多いという。その理由は「半導体サプライチェーンの1次サプライヤー(ティア1)、2次サプライヤー(ティア2)はまだ様子見でほとんど進出していない。半導体関連企業からの問い合わせが弊所に殺到するとすれば、第3工場が熊本に決まって需要が大きく見込めるようになった後の話」(水野所長)だからだ。
目下、TSMC進出による資金需要争奪戦の主要舞台は不動産市場だ。すでに地価は急騰しているものの、地銀各行は不動産需要が底堅いと見て、関連する資金需要を奪い合っている。加えて、その不動産需要をさらに強くする新たなプレイヤーの存在も見えてきた。
地銀各行が注目するそのプレイヤーとは?地元大手不動産会社を含めた各社・各行の動向を次ページでレポートする。