振り返れば、安倍1強時代、当時の安倍晋三首相は、消費税の軽減税率で政府方針に異議を唱えた野田毅税調会長を更迭した。岸田文雄首相の時代でさえ、2022年の防衛増税、2023年の定額減税の際には、当時の岸田首相が与党幹部を官邸に呼び、事前の相談もなく、自らの方針を伝達し従わせた。

 永田町のパワーバランスを気象に例えれば、これまでは上記のような「政高党低」(官邸の力が与党より強い状態)だった気圧配置が、今や与党はもちろん少数野党にもお伺いを立てなければ政権が維持できない「政低党高」状態に変化している。

 ある議員は次のように指摘する。

「そんな状況下で、また裏金問題が浮上すれば、国民の皆さんの批判や野党の攻撃をかわすために、『石破さんには降りてもらわないと』という話になる」(旧二階派衆議院議員)

気になる石破首相の
「対中警戒度」の低さ

 石破首相の場合、得意なはずの外交・安全保障でも「?」がつく。その典型的な例が、中国に取り込まれる形での関係改善である。

 11月15日、石破首相が訪問先のペルーで習近平国家主席と会談し、両手で握手を交わしていた頃、筆者の取材によると、北京で両国の外務省高官による極秘での交渉が行われていた。だが、この事実はあまり知られていない。

 その交渉とは、近く、中国が日本からの渡航者に対するビザ免除措置を、また日本も中国からの渡航者に対してビザ発給要件の大幅緩和を決定するための詰めの協議だったとされる。

 外務省関係者によれば、中国側はこの時点でも、「日本がビザ発給要件緩和をしなければ、こちらもビザを免除しない」という姿勢だったが、その約1週間後の11月22日、中国側は電撃的に日本など9カ国に対しビザ免除の再開を発表した。

 双方の外務省高官協議で暗礁に乗り上げていた問題が、わずか1週間で解決したのは、外相を超えるようなレベル、たとえば習氏自らの判断が働いたとしか考えようがない。

 その背景には、中国経済の低迷がある。経済成長率は5%前後(それも数%は上乗せされた数字と言われている)まで落ち、失業率も若者層では15%前後(全体では4700万人が失業)にまで達する中、アメリカで「反中国」を貫くトランプ政権が誕生すれば、その悪影響は避けられない。

 そうなれば、少し気が早いが、2027年10月ごろ開かれる第21回中国共産党大会で、15年ぶりにトップ(総書記)を交代させようという流れになりかねない。