この「全力で守る社員」とは誰を指しているのでしょうか。少なくとも被害女性はもう社員ではないはずです。彼女の周囲で飲み会などをセットして、タレントを接待するのが仕事だという慣習を押しつけてきた社員を守るとしか、読めない文面です。

 その上で「昨年より我が社は外部の弁護士を入れて事実確認の調査をしており、さらに進めていきます」とし、「今こそ、我々は意識改革を行い、会社全体が変わっていかなければなりません」「コンプライアンスをさらに徹底し、ひとりひとりが存分に能力を発揮できる、働きやすい環境づくりにも努めていきます」と述べた上で、中居騒動の影響で“意識改革プロジェクト”がスタートしたと報告しています。

 この段階で、外部弁護士の事実確認の調査が完了していないことは、一流企業としてお話になりません。中居氏がコメントを出す段階で、すでに確認作業は終わり、危機管理の4段階ともいうべき(1)調査、(2)謝罪、(3)処分、(4)再発防止策が同時に発表されていなければ、まともな企業とは言えないのです。

フジテレビ社長は
責任を問われてもおかしくない

 被害女性本人が「周囲に相談した」と文春に証言しているにもかかわらず、中居氏を使い続け、トラブルが週刊誌で明らかになり、さらに中居氏自身がコメントを出す段階で、ようやく調査をしていることを明らかにしたことなど、信じがたい行動です。私が株主なら、社長の責任を追及し、今回の事件をずっと秘匿していた幹部社員の処分や、当該の元女性社員への慰謝料や現場復帰への努力を要求するでしょう。

 また、芸能界における性加害や性的接待の強要が何度も報道されている時代だからこそ、明確にそれを禁止する厳しいシステムの構築に努めるのが常識だと思います。

 私は港社長のメールを厳しく問い質しましたが、これは嘉納修治会長や遠藤龍之介副会長にも、同じく責任があると考えます。特に遠藤氏は民放連の会長であり、ジャニーズ問題についても「自分たちの報道が不十分だったこと、制作に関わっている方々の人権に対する意識が低かったことは深く反省する必要がある」と記者会見で述べているからです。

 深く反省するどころか、お膝元のフジテレビでは同様の性加害の問題をまったく解決しようとしなかったのです。民放連の会長である以上、テレビ業界全体の膿を出し切る責任があり、中居氏が犯した性加害がフジテレビだけだったのか、あるいは他の局にも及んでいたのかについての調査も、率先して発議すべきでしょう。