「あり得ないほど中身がない」
あの社長会見は何だったのか?
私は40年以上雑誌社に勤めてきましたが、1月17日に行われたフジテレビの港浩一社長の記者会見は、私の経験上ワースト3に入るほど中身のない会見でした。誰がどう見ても、中居正広氏の性加害問題に真摯に向き合う姿勢が感じられないものだったからです。
第一に、メディアへのあり得ない対応です。会見を定例の社長会見として、一部メディアの記者相手に対してのみ行い、しかも中継は禁止という条件です。映像メディアであるテレビ局が問題を起こしているのに、条件付きの「秘密会見」が許されるなら、今後どんな企業もフジの会見要求に対しては、映像撮影と中継の禁止を要求できるでしょう。
次に、2023年6月に中居氏から女性が受けた被害を把握していたものの、中居氏に対して調査や適切な対応を行わなかった理由の説明です。中居氏への聞き取り調査は、より多くの人間がこの件を知る状況を生むため、女性のプライバシーが守られない恐れがあったこと、また、中居氏が出演する番組を唐突に終了して憶測が生じることを懸念したことなどが、理由として述べられました。
テレビ局が視聴率不振などの理由で、番組の放映予定回数を繰り上げて終了することなど、普通にあることです。それで驚く視聴者が、それほどいるはずはありません。ましてや『まつもtoなかい』は、『週刊文春』との訴訟に全力を注ぐという理由で松本人志氏が番組に登場せず、『だれかtoなかい』に番組タイトルも変更されていたのだから、番組中止は不自然ではありません。その上、中居氏からも事件について報告があったのに、一度も詳しい事情聴取をしなかったことが会見で明らかになりました。
会見前には、社員への一斉メールで、すでに外部の弁護士が調査を始めていると報告していましたが、だとしたら、一体その外部弁護士は何を調査していたのでしょうか。当事者に直接事情を聞かない弁護士など普通は考えられないので、その調査の「真剣度」自体が信用できません。もし本当に調査が開始されていたのなら、その途中経過を報告する程度のことは、記者会見でもできたはずです。
さらには、今後の調査についても「第三者の弁護士を中心とする調査委員会に委ねる」として、あらゆる質問に対して「調査委員会の報告を待つ」と繰り返すばかりの、不誠実な回答に終始しました。