「廃虚だらけの港湾都市」――。カンボジア西南部に位置するシアヌークビルは、今やそう呼ばれている。コロナ禍前までは中国が唱えた「一帯一路」構想の重要拠点であり、「第二のマカオ」を目指して開発ラッシュが起きていた。しかし現在は中国の不況により投資が止まり、市内には建設途中の建物が数多く放置されている。現地に出向いて、実情を調べた。(フリージャーナリスト 竹谷栄哉)
カンボジアの廃虚街「シアヌークビル」
中国投資で「第二のマカオ」目指すも“転落”
カンボジアの首都プノンペンからバスで揺られること3時間、海沿いの街シアヌークビルに到着した。下車してすぐ視界に入ったのが、コンクリートの骨組みのまま建設途中で放置された高層ビル群。さらに中心部に近づくとカジノが至る所にあり、中国語の看板が目に飛び込んでくる。まるで中国の地方都市にいるかのような錯覚を覚えた。
シアヌークビルはかつて、欧米のバックパッカーや国内観光客がビーチリゾートを楽しむ穏やかな港町だった。ところが、2010年代後半からカジノや大型ホテルなどの不動産開発を中心に中国資本が流れ込み雰囲気が一変した。
中国の習近平国家主席による「一帯一路」構想において、タイランド湾に面した好立地を見込まれ、カンボジア最大の経済特区に位置付けられたからだ。港湾を生かした物流拠点として、また、ビーチや近隣離島との観光とカジノをセットにしたリゾート開発も、「第二のマカオ」を目指せと中国投資家や中国企業が推し進めてきた。