そして、社員全体からも不信の声が爆発しています。事実上、一種の「秘密会見」でしか事態を報告していないのですから、社員たちが疑心暗鬼になるのも無理はありません。
会見の様子を伝えた同局のニュース番組『Live News イット!』では、キャスターを務める宮司愛海アナウンサーが「会社が生まれ変わる一歩にするべきだと私は感じています」と覚悟のあるコメントをしました。また「意図しない目を向けられて傷ついている仲間が多くいます。とてもつらくて、自分たちで説明もできない。とてももどかしい状況に置かれています」と述べました。
さらに「今回の会見は社員を含めて、全面的に公開はされませんでした。社員に対する説明も真摯に行って、それも真摯に公表してほしい」と、テレビという公開の場で、自局の上層部に対して社員への説明を要請しています。
宮司アナが踏み込んだ発言をしたのは、1月16日発売の『週刊文春』で、フジの女性アナウンサーが仮名で取材に応じ、「私もAさんに“献上”されました」と告白したことも背景にあるでしょう。ネット上では取材に応じたアナの特定が過熱しており、局内で“犯人捜し”まで行われているようです。
CM差し替えドミノと社員の反乱
「終わりの始まり」を食い止められるか?
そして、フジの広告営業は、深刻なスポンサー離れに頭を抱えています。すでに、スポンサーを降りると宣言した会社は、 日本生命、トヨタ自動車、明治安田生命、NTT東日本、アフラック、花王、日本マクドナルド、セブン&アイ・ホールディングスなど、1月21日の時点で50社を超えました。中居氏が出演している番組にCMを出していなかったクライアントまでもが当面の撤退を宣言したのは、フジテレビそのものへの不信感にほかなりません。
この趨勢は時間の経過とともに、どんどん拡大すると思われます。「本当の意味での第三者委員会」をすぐに立ち上げ、メンバーを公開するのが、スポンサー離れを食い止める第一歩。しかしそれだけではなく、事件の隠蔽の責任をとって、遠藤龍之介副会長(民放連会長)や港浩一社長が辞任し、接待への関与を否定している編成部長のA氏を疑惑が晴れるまで謹慎処分にするなどの措置を発表しない限り、営業が破綻しかねません。
私が文藝春秋に在籍していた頃を思い起こすと、昭和や平成の時代、雑誌の編集部員たちには、芸能事務所などからタレントとの会食や誕生会といった、甘い誘いがたくさんきました。私が編集長の時代は、その手の会食への参加を部員に対して厳禁していました。それでも女性アイドルグループの全盛期には、女性タレント中心の事務所を担当する部員が、会社に隠れて会食に参加していたケースもあったようです。が、そういう「昭和の遺物」のような接待や女性への対応は、もう完全に通用しない時代になっています。
23日にはフジテレビで社員向け説明会が、そしてフジ・メディア・ホールディングスでは臨時取締役会が開催されることが決まりました。トップや経営幹部には、現実を深刻に受け止め、真摯な綱紀粛正と制度の改革を望みます。
(元週刊文春・月刊文藝春秋編集長 木俣正剛)