錚々たるメンバーであるとともに、林氏は「私たちは第三者委員会であると受け取ってもらっても差し支えない」と回答しています。これに対して、港社長の言う「第三者を中心とする調査委員会」では、フジテレビやその関係者に近いメンバーが調査を行い、調査での証拠処理能力や判断力に疑問のあるメンバーが加わる可能性が大きいのではないかという疑念が残ります。この1年半におよぶフジテレビの不誠実さ、記者会見での応答を見る限り、うやむやにしたいという希望がミエミエなのです。

 さらに第三者委員会なら、調査の過程において必要と考えられる場合には、捜査機関、監督官庁、自主規制機関などの公的機関と適切なコミュニケーションを行うことができるとされています。

耐えなければ生き残れない
「第三者委員会」の厳しい調査

 事件発生当時から刑事事件に相当する可能性が高い案件であるとわかりながら、1年半も放置していたフジテレビが、第三者委員会が行う厳しい調査に、企業として耐えられる覚悟があるでしょうか。

 調査の内容は、関係者に対するヒアリング、書証の検証、証拠保全、統制環境などの調査、自主申告者に対する処置、デジタル調査といったものです。社員全員へのアンケートなどは、色々な第三者委員会で日常的に行われています。

 すでに『週刊文春』には、フジテレビ内部の別の被害者が名乗り出ていますし、女性社員を接待役として芸能人との飲み会に同行させる悪しき慣行なども報道されていますが、これも調査対象に入ります。しかも、結果の報告は公に開かれたホームページ上でなされると、ガイドラインには記されています。

 前回の記事で私は、企業の危機管理の当然の義務として、(1)調査、(2)謝罪、(3)処分、(4)再発防止策を挙げました。結局、港社長の記者会見からは、会見の時点で会社として当然の義務がほとんど履行されていないことだけがわかりました。プライバシーの問題があるとはいえ、一部メディアで「元社員」と報じられている被害女性への慰留や、慰留し切れずに本人が退社した際における会社からの謝罪や慰謝料などの概要についても、触れていません。

 実際、被害女性は文春にフジテレビ側の関係者に相談していたと打ち明け、「『そういう会社だよな』という諦めの気持ちが強い」「受けた傷は一生消えないし、元の人生は戻ってこない。お金を払ったらすべてがなかったことになる世の中にはなってほしくない」と悲痛な叫び声をあげています。港社長はこの声に応える会見ができたとは、とても思えません。