会見の前日、フジテレビを傘下に持つフジ・メディア・ホールディングスの主要株主である米投資ファンド、ダルトン・インベストメンツから、第三者委員会の設立と視聴者への信頼回復を訴える書簡が送付されていたことが明らかになっています。
この書簡はかなり長文で、第三者委員会設立の理由として(1)フジテレビにはコーボレートガバナンスに重大な欠陥があることが露呈した、(2)組織としての公平性や透明性が非常に深刻な状態で欠如している、(3)視聴者の信頼を揺るがし、フジテレビの透明性と危機管理能力を損なうような事件は、必然的に株主として株式の価値を損なう危険があるといったことを挙げ、自分たちは非常に憤慨していると述べました。そして前述のように、第三者委員会を早急に設置して、再発防止策と改善策を提示することを求めたのです。
それは結局、何なのか?
言及された「調査委員会」の正体
ここで気になるのが、投資ファンドが要求しているのは「第三者委員会」であるのに対して、港社長が会見で設置を表明したのが「第三者の弁護士を中心とする調査委員会」だった点です。実は、この違いはかなり重要です。
日本弁護士連合会は、企業などが不祥事に関して設ける第三者委員会の定義を、ガイドラインを作って明確にしています。特に重要なのが構成員に関する要件です。「第三者委員会は、対象企業から独立した立場で、ステークホルダーのために中立・公正で客観的な調査を行うべきもの」とされています。そのためには、委員全員を対象企業と利害関係のない人物から選任しなければなりません。
また、現経営陣にとって不利な内容であっても、第三者委員会調査報告書などに記載することが求められます。調査結果についての事実認定は、証拠に基づいて客観的に行う必要があります。さらに、認定された事実の評価と原因分析は、法的責任の観点に限らず、自主規制機関の規則やガイドライン、企業の社会的責任(CSR)、企業倫理などの観点から行うべきとされています。
このガイドラインに従えば、当然、証拠や法的問題を明確にできる弁護士や検察、裁判を経験した重鎮がメンバーとして要求されます。同様の性加害問題に直面したジャニーズは第三者委員会ではなく、再発防止チームを発足させましたが、そのチームの構成は、座長の林眞琴氏(弁護士・前検事総長)、飛鳥井望氏(精神科医・青木病院院長、精神保健指定医、日本精神神経学会精神科専門医。専門は精神医学一般、PTSD、悲嘆反応)、齋藤梓氏(上智大総合人間科学部心理学科准教授)で、他に弁護士6名が調査補助者として特別チームの事務局を務めました。