エンジンは高速道路を含めて必要十分以上のパワーを発揮。まさに思いのままに走れる。意外に速い印象だ。7速DCTはパドルを備え、アクティブなドライビングにも対応する。アクセルをあまり踏み込まない発進時こそ、もうちょっと加速を鋭くしてほしいと感じるが、それ以外は不満を覚えるシーンはない。静粛性も全般的に優れている。WLTCモード燃費は17.0km/L。燃料タンク容量は40L確保され、航続距離は十分だ。
T-Crossで、ドライビングを楽しいと感じさせるポイントは、そのフットワークである。欧州で鍛え上げられただけに、スピードが上昇するほど安定感が増し、乗り味はフラットに変化。どこまでも走って行きたくなる。一方で街中の乗り心地も優秀だった。試乗車はオプションの18インチタイヤを装着していたが、よく履きこなしていた。乗り味は基本的に硬めだが、適度なしなやかさを持ちあわせている。
巧みな室内パッケージにも感心した。前席はもちろん、後席の居住性も優秀。どの席に座ってもくつろげ、着座姿勢が自然なため安心感が高い。ラゲッジスペースのアレンジ性も素晴らしい。後席はスライド機能付きで荷室の広さを調節可能。容量は後席使用時で455L。6対4分割のシートバックを倒すと最大1281Lに拡大する。
T-Crossは、VWのまじめな魅力が凝縮した仕立てのいいSUV。乗るほどに生活に寄り添い、ライフスタイルが広がる優等生である。
(CAR and DRIVER編集部 報告/横田宏近 写真/横田康志朗)