2つ目は「高い課題解決能力」です。プロダクトが成功するためには、顧客が抱える、時として潜在的で、かつ重要な課題を解決できることが必要です。顧客が課題を必ずしも明確に認識していない場合もありますが、その解決は喫緊のニーズに直結するケースが少なくありません。Zoomの成功例は、これを象徴しています。Zoomは通信速度が低い環境でも高品質な音声・映像を維持する技術的課題を解決し、快適なリモート会議を可能にしました。さらに、パンデミック下で顕在化した「誰もが簡単に参加できる環境」という潜在的ニーズにも応え、急速な普及につながりました。

 3つ目は「迅速な改善サイクル」です。Dropboxは、初期の段階からユーザーの声を反映した小さなアップデートを繰り返すことで、ユーザー体験を絶えず向上させてきました。例えば、ファイルのバージョン管理機能の強化や、共有リンクへのセキュリティ設定機能の追加など、一見小規模に思える改良でも、ユーザーにとって重要な価値をもたらす更新を続けています。こうした継続的な改善によってユーザーの満足度を高めると同時に、競合他社との差別化を実現したのです。

プロダクト力の向上は
事業成長そのものの基盤になる

 PLGでは、プロダクトの価値がユーザーにとって明確でなければ、成功はあり得ません。営業力に依存するSLGでは、プロダクトの欠点を補う形で営業担当者が価値を顧客に説明できます。しかし、PLGではそれが通用しません。優れたプロダクトがなければ、ユーザーはすぐに離れてしまいます。

 また、PLGでは、「ユーザーがプロダクトを試し、価値を実感し、他のユーザーを巻き込む」サイクルを自然に生み出すことが求められます。このため、プロダクト力を高めることは単なる競争力強化にとどまらず、事業成長そのものの基盤を築くことにつながります。