この連載は、『医師が教える 子どもの食事 50の基本』の著者で、赤坂ファミリークリニックの院長であり、東京大学医学部附属病院の医師でもある伊藤明子先生によるものです。テレビなど多数のメディアに出演されている信頼度の高い人気の医師です。
本書の読者からは、
「子を持つ親として、食事の大切さがよくわかった」
「何度も読み返したい本!」

といった声がたくさん届いています。不確かなネット情報ではなく、医学データと膨大な臨床経験によってわかった本当に子どもの体と脳によい食事。毎日の食卓にすぐに取り入れられるヒントが満載です。今回は食物繊維の重要性について解説します。
※食物アレルギーのある方は必ず医師に相談してください。

【小児科医が教える】子ども時代に「腸活した子、しなかった子」。大人になってから現れる影響とは?Photo: Adobe Stock

大人も子どもも食物繊維が圧倒的に足りていない

 2019年の日本人の食物繊維摂取量は1日あたり17.5g(中央値)。7~14歳の年齢層では16.7g(中央値)です(いずれも国民健康・栄養調査)。これは非常に少ない量です。

 1951年ごろの摂取量は23g(大人の場合)だったので、どんどん下がっている傾向にあることもわかっています。

 日本人の食事摂取基準2020年版では、成人は1日に24g以上の食物繊維摂取が望ましいとされています。しかし現時点では前述のとおり、17~18gしか摂れていません。

 高すぎる目標を掲げても実現の可能性が低いため、今では目標量を、
 ●10~11歳は13g以上
 ●成人は、女性18g以上、男性21g以上

 としています。

いつものシリアルをチェンジ!

 食物繊維を手っ取り早く食べさせてあげたい。そんなときは、朝食のシリアルを「大麦」「小麦ブラン」「オートミール」のどれかに変更してみましょう。もしくはいつものシリアルに混ぜるだけで、効果を期待できます。

 大麦のシリアルは、その名のとおり大麦を主原料としたシリアルです。小麦ブランとは、小麦ふすまとも呼ばれ、小麦粒の表皮部分のことです。食物繊維はもちろん、一部のビタミン、ミネラルも含みます。オートミールはオート麦(燕麦えんばく)を脱穀して、調理しやすく加工したものです。

 それぞれのシリアルを食べるときは、オーツミルク、アーモンドミルクをかけるのがおすすめ。さらに栄養価が高まりますよ。

 食物繊維は、
 ●不溶性食物繊維
 ●水溶性食物繊維
 の2種類に分けられます。

 腸内細菌には私たちの心身や脳の健康に有益な働きをしてくれる善玉菌、有害とされる悪玉菌、そのときによって態度を変える日和見(ひよりみ)菌がいます(最近の研究では善悪の境目があいまいになっていますが)。善玉菌を増やすには水溶性食物繊維が必要で、とくに豊富に含むのは「大麦」「オートミール」です。また、「小麦ブラン」は大腸で善玉菌を増やす「アラビノキシラン」を豊富に含んでいます

免疫の7割は腸で働く

 食物繊維は便秘予防というイメージをもつ方が多いですが、決してそれだけではありません。食物繊維は免疫にも重要な役割を担っているので、とくに子どものときから摂取する習慣がつくと一生の健康につながります

 私たちの腸の中には腸内細菌が約1000種類、100兆個存在します。これは人間の細胞の数である60兆個よりも多い数です。

 腸内細菌のうち、善玉菌たちが人間にとって健やかな活動をするために、食物繊維は必要不可欠。食物繊維はいわば善玉菌のエサだからです。

 十分な食物繊維があると善玉菌が盛んに活動し、私たちの腸にある免疫細胞が働きます。ちなみに、カラダの免疫の約7割が腸で働いています。

 ただし、善玉菌が必ずいつも善行をしているとは限らず、悪玉菌も絶対的な悪ではないということも、近年の研究でわかってきています。腸の世界はとても奥深いですね。

食物繊維は「脳」にも大切

 神経と血液を介して、腸内細菌の代謝物(作るもの、分泌するもの)が脳に運ばれ、それが脳の働きを左右しています。腸内環境が乱れると、情緒や気分が崩れるのはこのためです。これを腸脳相関と呼びます。腸と脳が関係しているなんて意外に感じるかもしれません。でも子ども時代からしっかり腸活をすることで、脳の働きを助けてくれるのです。

おすすめ 腸活レシピ

 腸活にぴったりのシリアルを使ったレシピをご紹介します。便秘にもおすすめです。おなかのなかで善玉菌をしっかり育てましょう!

◆腸活シリアル◆

材料(1人前)
● バナナ(小さめ) …… 1本
● プロテインシリアル …… 30~50g
● すりゴマ(黒でも白でも) …… 大さじ1
● ブランのシリアル …… 大さじ1
● ごぼうパウダー …… 小さじ1
● オーツミルク …… 150~200cc

作り方
1

バナナは皮をむいて食べやすい大きさに切る。

2
1とすべての材料をよく混ぜ合わせる。

ポイント
よく噛んで食べましょう。便秘がひどいときには食後に整腸剤を飲むことをおすすめします。市販のものなら、ビオフェルミン、ビオスリー、ミヤリサン、ラックビーなど。また、便秘によく効く漢方薬もあります。主治医に相談しましょう。

(本原稿は伊藤明子著『医師が教える 子どもの食事 50の基本から一部抜粋・編集したものです)