総予測2026Photo by Yoshihisa Wada

みずほ銀行の加藤勝彦頭取は、2026年の日本経済について、穏やかな回復が続き、実質賃金は5年ぶりにプラスへ転じるとの見通しを示す。特集『総予測2026』の本稿では、直近3年で円高を予想しながらも円安が続いた要因と為替の行方に加え、米投資銀行グリーンヒルとの連携を軸にした他の外銀にはないみずほの優位性や、投資銀行部門でグローバルトップ10入りを目指す26年の戦略を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)

実質賃金は5年ぶりプラスと予想
日米金利差縮小で円高は進む?

――2026年の日本経済をどう見通していますか。

 25年度の日本経済は、全体として穏やかな回復基調にあります。景気ウオッチャー調査(街角景気)の指数上昇に表れているように、出張で国内各地を回っていても現場の手応えを感じます。高市新政権への期待もあり、25年度の景気の腰折れリスクは低いでしょう。

 実質GDP(国内総生産)成長率は、25年度が1.1%程度、26年度も0.6%程度と、ほぼ同じモメンタムを想定しています。関税の影響で一時的に慎重さは出たものの設備投資は底堅い。個人消費の持ち直しも加わり、穏やかな回復が続くと見込んでいます。

 その結果、26年の実質賃金は5年ぶりにプラスへ転じると予想しています。

――25年12月の金融政策決定会合を含めて、26年までに日本銀行の利上げは何回行われるでしょうか。

 実質賃金が上がり、賃金と物価の好循環が確認されれば、日銀も利上げに踏み切りやすくなります。

 26年に入った後、春闘の状況が見えてきた段階で1回、さらに26年中にもう1回の計2回の利上げを想定しており、政策金利は1%まで到達するイメージです。それに伴い、長期金利も上昇していくとみています。

――26年の米国経済はどう見通していますか。

 25年の米国経済から振り返ると、当初はもう少し景気が悪化すると想定していましたが、実際には総じて堅調でした。

 本来、関税引き上げはインフレ率を押し上げ、景気の下押し要因になりますが、企業が価格転嫁を急がずコストを吸収したことが、景気悪化を和らげた一因だと考えています。

 FRB(米連邦準備制度理事会)はこの間、段階的に利下げを進めてきました。26年度も追加利下げが焦点です。

 今後はさらに0.5%程度の利下げが行われ、26年の政策金利は3.25~3.5%前後に落ち着くイメージです。その結果、日米金利差は徐々に縮小していくと見込んでいます。

――その前提を踏まえると、円高が進むでしょうか。

 私はここ3年ほど「円高方向に向かう」と申し上げてきましたが、現実にはそうなっていません。

次ページでは、加藤頭取の予想に反して円安が進んできた要因に加え、投資銀行部門でみずほにしかない競争優位性、CIB「グローバルトップ10」入りに向けて本格参入する地域を聞いた。