この連載は、『医師が教える 子どもの食事 50の基本』の著者で、赤坂ファミリークリニックの院長であり、東京大学医学部附属病院の医師でもある伊藤明子先生によるものです。伊藤先生はテレビなど多数のメディアに出演されている信頼度の高い人気の医師です。
本書の読者からは、
「子を持つ親として、食事の大切さがよくわかった」
「何度も読み返したい本!」
といった声がたくさん届いています。不確かなネット情報ではなく、医学データと膨大な臨床経験によってわかった本当に子どもの体と脳によい食事。毎日の食卓にすぐに取り入れられるヒントが満載です。今回はインフルエンザになったときの食事について解説します。
※食物アレルギーのある方は必ず医師に相談してください。
インフルエンザになった時の食事 4つのポイント
インフルエンザの患者さんが急増しています。
お子さんがインフルエンザになったら、真っ先に食べさせてほしい食材をご紹介します。
① 「たんぱく質」をしっかり摂る
カラダが感染症とたたかうには、免疫細胞(白血球)がしっかり働くことが大事です。食が細く、たんぱく質が不足気味の子どもは、白血球数が比較的少なめなことがあります。白血球や、病気とたたかう抗体はたんぱく質ですから、たんぱく質の摂取量が少ないと抗体が十分に作られないこともあります。卵、魚、肉、大豆食品(納豆、高野豆腐、豆腐等)のたんぱく質をしっかり食べて早く治しましょう。
消化にいいからとシンプルなおかゆや素うどんを出す方も多いですが、それではたたかう力は回復しにくいので、おかゆに卵を足したりして、たんぱく質の食材をプラスしてください。
② 粘膜などの強化には「ビタミンA」が力を発揮
病原体が私たちの体内に入る経路は、鼻孔や口(食道)、目など、外界とつながる「穴」がスタート地点です。穴の先は粘膜で覆われていて、病原体との主戦場となります。
粘膜で病原体とたたかうIgA(免疫グロブリンA)抗体を作るために力を発揮するのが、ビタミンAです。強い抗酸化力をもったビタミンAが、病原体による炎症を局所で抑え込んでくれます。
野菜など植物に含まれるベータカロテンが、腸でビタミンAに変換されて活用されます。うなぎ、銀だら、あなご、チーズ、卵、のり、しそ、モロヘイヤ、にんじん、ほうれん草などに含まれています。
③ いつも以上に「抗酸化物質」をしっかりと
風邪、インフルエンザなど感染症による症状のときは、いつも以上に炎症とたたかう抗酸化物質をしっかり摂ると、早く治ることが期待できます。
新鮮な魚と野菜とともに、薬味、スパイス、ハーブなどの抗酸化力がとくに高い食材を摂るとよいでしょう。
④ 炎症に効く「はちみつ」も
はちみつは、病院で処方される一般的な薬と比べて、咳・鼻水などの症状を抑える効果が有意だったという研究があります[*118]。
はちみつには抗菌作用があります。抗酸化作用のあるポリフェノールが含まれているので炎症を抑える作用があることに加えて、ほかにも栄養素が含まれます。これらが総合的に有用な効果を発揮するのではないかと考えられています。
ただし、子どもに与える場合は、絶対に1歳以上になってからです。
冷たいものを食べたら熱は下がる?
発熱によるしんどさで食欲がないときに、「アイスクリームはどうですか?」と、ときどき診察室で尋ねられることがあります。
アイスクリームは糖と脂質なのでおすすめ食材ではありませんが、どうしても他のものがのどを通らないときは少しならよいかもしれません。ただ、平時にはおすすめはしないです。ちなみにアイスクリームを食べて体の内側から冷やすことが、解熱につながることはありません。
食欲がなくて食べ物がのどを通らないときは、栄養系のゼリー(糖・グルコースだけのタイプではなく、アミノ酸やビタミン・ミネラル系)での栄養補給も検討してみましょう。
水分補給も忘れずに
具合が悪いと、水分補給も少なくなりがちです。感染症で脱水になることもあります。飲みたがらなくても必ず水分をあげてください。
ポイントは、少量でもいいのでこまめに飲むこと。2~3口でよいので、こまめに飲むようにしてくださいね。
水は体の中の化学反応に必ず必要なものです。熱で体が消耗しているとき、インフルエンザの影響で嘔吐や下痢がおきることもあります。普段以上に、水が必要です。
インフルエンザワクチンを受けよう
日本でのインフルエンザによる死亡する人は1シーズン(1年)で約1500人です。毎年10月1日になると医療機関でインフルエンザの予防接種を開始します。
予防接種をすれば、インフルエンザでの死亡やインフルエンザ脳症などの重症化を防ぐことができます。毎年10月に早めの接種をおすすめします。
(本原稿は伊藤明子著『医師が教える 子どもの食事 50の基本』から一部抜粋・編集したものです)