ベンチャーやスタートアップと聞いて、何を思い浮かべますか? 熱狂的な立ち上げ時のエピソード? それとも、売却や上場などの華々しい幕引きの瞬間? 実は、そうした「よくある成功エピソード」は起業を成功に導くうえで役に立たない――そう言い切るのが、起業、投資、新規事業創出のいずれにおいても成果を出し続けているスコット・ベルスキ氏です。起業におけるブラックボックスを明るみに出し、「最後に正しい側にいられるかどうか」を決めるうえで必要なあらゆるアドバイスを網羅した『ザ・ミドル 起業の「途上」論』(関美和訳、英治出版)から、珠玉の3編を紹介します(本稿は、同書の一部を抜粋・編集したものです。全3回の1回目)。
「前向きなフィードバック」ばかり
探しはじめたら黄信号
初期のうちからちょっとした成功を認めて祝うことは大切だが、それがニセの成功でないことを確かめてほしい。誰かに褒めてもらいたいという気持ちはわかるけれど、前向きなフィードバックを無理やり求めても、ニセのいいことしか出てこない。前向きな証拠を探し続けていれば、必ず何かが見つかるはずだが、それではもっと大切な真実が見えなくなってしまう。
ベハンスを立ち上げたばかりで、同時にプリファーというフリーランスの紹介ネットワークの立ち上げを手助けしていた頃、僕は毎日ことあるごとに自分たちのプロダクト解析データを眺めていた。ユーザーの登録数は昨日よりも増えただろうか? 「いいね!」やシェアは先週より増えたか? ツイッターのフォロワーを何人獲得したか? もちろん、こうした指標は大切だったけれど、僕はすべてのトレンドを客観的に見ていたのではなく、よくなっている兆候だけを探していた。ほかの何よりも承認が欲しかったのだ。
プロダクトマネジャーでありテクノロジー起業家としていくつものスタートアップを立ち上げてきたベン・エレズは、前向きなフィードバックばかりを探して自分を励ますのは危険だと言っている。