グローバルメッセージングプラットフォームのワッツアップをフェイスブックが買収すると発表したとき、その見出しを見間違いかと思ってしまった人も多かった。190億ドル(当時の価値で2兆円を超える)という金額は、売上もない企業に支払うにはバカバカしい大金に思えた。

 だがもしフェイスブックがメッセージ業界を独占しプラットフォームを超えてお互いがつながり合う手段を手に入れたいと思ったら、業界最大のメッセージングアプリであるワッツアップを手に入れることが必須だった。この買収は大成功に終わり、2018年2月にはワッツアップの月間アクティブユーザー数は15億人を超えていた。そんな大胆な賭けができるのは、まだ1パーセントしか終わっていないと信じていられる会社だけだ。

起業当初に持っていた
「あの気持ち」を忘れないために

書影『ザ・ミドル 起業の「途上」論』(英治出版)『ザ・ミドル 起業の「途上」論』(英治出版)
スコット・ベルスキ著、関美和訳

 創業初期は最もいろいろなものが生み出される、柔軟な時期だ。成功を当たり前だと思っていないし、リスクを取って失敗もする。プロダクトも居場所を見つけている途中で、大転換もいとわない。夢でもうつつでもアイデアが飛び出し、大きな違いをもたらすようなちょっとした変更をいつも考えている。

 また、最初のうちはいつも売り込んでいる。会う人は誰でも支援者になり得るし、投資家にも従業員にも先生にもユーザーにもなり得る。それが一瞬ではなく、習慣になる。

 プロジェクトが終盤に近づくと、はじめのうちは持っていた心の広さや謙虚さや軽さを保ち続けるのが難しくなる。最終的な目標を見えないくらい遠くに置くよう調整し続け、成功すればするほど盲点も多くなることを肝に銘じよう。頭も心も、試合の初期にとどまろう。