先述のようにGAFAM全体で年間50兆円の投資をするとします。それで開発されたAIは世界人口の70億人のうち「中流層以上」と呼ばれる世界の4億人が主に使うと想定しましょう。すると消費者ひとりあたりへの投資コストは年12.5万円になります。

 これは実はなかなか大きい投資です。

 GAFAM全体で元がとれている状況を考えると、それこそChatGPT Proのように1カ月3万円、年間36万円で売れるAIサービスを、世界の中流以上全員が使ってくれるような世界になって初めて元がとれることになります。

 計算式としては12.5万円の原価で36万円の売り上げなら原価率35%というような概算です。これがこれまでのAI経済論の前提でした。

 そこに急に、「月1200円で大丈夫。性能は同じだから」という商品が出現したらどうなるかという話です。DeepSeekと従来型のAIの価格差を考えると、まさにそんな商品が突如出現したわけです。

 このようにAIサービスの価格についてデフレ化が起きるとすると、短期的にはこれまでGAFAMが投資してきた金額がムダになります。単純思考だとGAFAMの株価は下がる要素ということになります。

 では実際のGAFAMの株価がどうなるかというと、ここが難しいところで、これからはAIの性能ではなく利用者の数のようなネットワーク外部性が働く要素で勝敗がつくように競争原理が変わるかもしれません。

 これはインターネットビジネス全般で寡占化が起きた背景要因です。その意味ではGAFAMにとってはこれまでのスマホ市場での戦い方を継続できるために有利だとも言えます。これはGAFAMの株価を上げる要素です。

 二流の占い師みたいな言い方で本当に恐縮ですが、このあたりどちらに転ぶのかは本当によくわからない。

 短期的にはGAFAM株は下がるけれども数年たったらやっぱりGAFAMが強いという展開になるかもしれないという話をしています。