半導体の覇者#11Photo:PIXTA

AI(人工知能)がけん引する世界の半導体市場。一方で、AIと関係しない半導体企業の業績や株価の動きは鈍く、日本企業は二極化している。では、「AI関連・非AI関連」の双方を含めて、潜在的な成長余力が大きい半導体・電子部品企業はどこか。ダイヤモンド編集部は、半導体・電子部品を手掛ける172社を対象に、七つの独自指標でランキングを作成した。特集『半導体の覇者』の#11では、一時的なAIブームに左右されず、巨額の設備投資と研究開発競争に耐え抜く「経営力」がある有望企業を大公開する。また、そこから成長余力が大きいのに株式市場で評価されていない「投資魅力度」もあぶり出した。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

AI「米国1強」にディープシークの冷や水
“非AI”は逆風、生き抜く有望企業はどこか?

 トランプ米政権が1月20日に発足し、AI(人工知能)投資を強力に推進する方針が鮮明になった。21日にトランプ氏は、ソフトバンクグループ、米オープンAI、米オラクルと共同会見し、米国内で総額5000億ドル(約78兆円)に上るAI関連のインフラ投資を行う「スターゲート計画」を発表し、米国発のAIブームを加速させている。

 これに冷や水を浴びせたのは中国だ。中国AI企業ディープシークが低コストの生成AIを開発したことで「米国1強」のAI産業に対する警戒が広がり、米エヌビディアを筆頭にAI関連株が売られた。

 株式市場は大荒れの展開だが、すでに日本企業ではエヌビディアが手掛けるAI半導体の急拡大で業績にプラスの影響をもたらした。AI半導体のサプライチェーンに食い込んだ半導体製造装置メーカーや素材メーカーがその筆頭。半導体回路を微細化する「前工程」や、半導体チップをパッケージングする「後工程」の装置・材料の出荷拡大の恩恵を受けたのだ。

 その一方で、AIと関係しない車載や産業向けの従来型半導体企業の業績の伸びは鈍い。

 世界半導体市場統計(WSTS)が予測する2025年の半導体市場は前年比11.2%増の6971億ドル(約108兆円)で2年連続の2桁成長が見込まれているが、そのけん引役はデータセンター用のAI半導体だ。24年の世界半導体市場は前年比19.0%増の6268億ドル(約97兆円)を記録しながら、AI関連を除くと自動車用途や産業用途が不振で、多くの従来型半導体の製品売上高は前年比マイナスだった。

 こうした株式市場の波乱や二極化の中でも、半導体業界は中長期の成長が見込まれている。AI関連か、非AI関連かにかかわらず、底力のある企業を見極めることが肝要だ。

 そこでダイヤモンド編集部では、半導体・電子部品172社を対象に、七つの独自指標でランキングを作成した。

 重視したのは以下の3分類の七つの指標だ。

●企業の基本的な稼ぐ力を表すデータ……企業を変革するにも「先立つもの」が必要。本業でキャッシュを稼いでいる企業を高く評価した。
【指標】年平均売上高成長率、営業利益率

●将来への投資意欲を表すデータ……現状の事業領域に甘んじることなく、将来有望な新しい領域に向けて果敢に研究開発費を投じている企業を高く評価した。
【指標】研究開発費、売上高研究開発費率、フリーキャッシュフロー

●事業の拡大意欲を表すデータ……製造業にとって設備投資の増減は生命線。設備投資をしっかり実施している企業を高く評価した。
【指標】設備投資額、売上高設備投資率

 さらに、上記7指標で算出した総合得点をPBR(株価純資産倍率)で割ることで「投資魅力度」を数値化した。一般的にPBRが低いほど株価は割安だと評価される。これにより将来性が高いにもかかわらず、株価に十分織り込まれていない銘柄が浮かび上がった。

 次ページで、半導体・電子部品172社の“生き残り力”と今こそ仕込んでおきたい投資魅力度のある銘柄のランキング結果を見ていこう。