DeepSeekは蒸留以外にも、さまざまな新しい開発手法を取り入れています。他の企業のAI開発者がDeepSeekと同じ手法を試して、それが使える技術だと判明した場合には、AI業界には経済的に3つの影響が生まれます。

(1)半導体やデータセンターへの投資がこれまでの想定から激減する
(2)関連して想定されてきた電力インフラへの投資も増やす必要がなくなる
(3)AIサービスの販売価格が大幅にデフレ化する

 今のところ株式市場は1の影響をすぐに感じ取って、それでエヌビディアをはじめとする半導体株とデータセンター関連株が大幅に下落する事態になりました。

 それに加えてということになりますが、仮にDeepSeekショックが本物だということになれば、原油価格にも影響するでしょうし、GAFAM自体の株価にも悪影響が及ぶ展開になりえます。

 ここまでのところ、エヌビディアと比較すればグーグルやメタ、マイクロソフトの株価はそこまでの動揺はみせていません。

 むしろAIの価格が下がればAI時代がさらに前倒しでやってくるだろうから、全体需要は増えるといった楽観論が株価を下支えしているようです。

短期的にGAFAM株は下がる可能性はあるが
数年単位で考えると…?

 一方で投資家の間では、「とはいっても、これだけAI競争に巨額の投資をして、仮に競争に勝ったとしても儲けることができるの?」という疑問が上がっています。

 このあたりを試算をもとに検証してみたいと思います。

 先日、OpenAIの最上位機種であるChatGPT Proの利用料金が1カ月3万円だと発表されて話題になりました。これまでの月3000円ならぎりぎりで個人でも使えるけど、月3万円では個人としては「もうついていけない」と言われたものです。

 一方で法人の視点では月3万円でも社員の数を減らせるほどあきらかな効率が得られれば問題はありません。従業員の能力がアップしてそれまで10人かかっていた仕事が5人で済むなら、生産性向上のメリットの方がはるかに大きいのです。

 そこで計算してみましょう。