正直、儲かりませんし、医局医も総動員ですごく手間なので、そうなると残るは名誉欲のためだとしか思えません。要するに、医学部教授にまで上り詰めた人というのは、人より偉くなるとか、トップになるということに対する執着が恐ろしく強い人たちの集まりであるということなのでしょう。

入試面接を廃止しない限り
医療界の変革は起こり得ない

 医局に残りたい人間は、教授批判も医学部批判もできません。また、既存の教授の方針に反するような新しい治療法の提案もできません。そうやって悪い意味で目立ってしまえば、既存の教授陣から総スカンを喰らって、出世の道は閉ざされるからです。

 そもそも既存の教授陣の方針というのはより権力のある学会ボスの方針でもあるので、医局の異端児になるような人間は学会からも嫌われます。だから、この大学の医局は自分に合わないから別の大学の医局へというようなことは現実的に難しく、そういうケースは極めてまれです。

 つまり、学会ボスも含め、既存の教授陣がごっそり入れ替わらない限り、現状を変えたくても変えられないのが大学医学部の実態なのです。

 しかも、次の教授を選ぶのも既存の教授たちによる教授会なので、たとえポストが空いたとしてもその椅子に座れるのは、既存の教授には逆らわないタイプの人間です。

 これではいつまで経っても医療の変革など起こりようがありません。

 もちろん「これはおかしいのではないか」と内心では感じていて、本当は異を唱えたいのに、状況的にそれができないという人が医局の中にそれなりにいるのであれば、ひょっこりクーデーター的なことが起こる可能性もゼロではないでしょう。

灘高→東大理三の医師が「医学部入試の面接を廃止しろ!」と叫ぶワケ『ヤバい医者のつくられ方』(和田秀樹、扶桑社)

 けれども残念ながらその可能性は極めて低いと思います。

 そういう異分子になりそうな人間は、入試面接の段階で排除され続けているからです。

 そのうえ、私のように現状の医学部を批判している人の子弟も面接で落としている疑惑もぬぐえません。

 つまり、多くの人たちが他人事だと考えている医学部の入試面接の制度を廃止しない限り、日本の医療界の変革は起こり得ないのです。