トランプ関税発動、貿易戦争へ発展か
ディープシーク・ショックをきっかけに、中国のAI企業に対する世界の注目度は高まった。AI関連の論文の量で、中国は米国を上回ったとの見方もある。今後も中国企業が、米国企業を脅かすようなAIやソフトウエアを発表することがあるかもしれない。そうなると、トランプ政策に対する投資家の懸念は増えるだろう。
そして今、何より懸念されているのがトランプ氏の強引な関税政策だ。大統領1期目で行った関税引き上げでは、企業から消費者への価格転嫁を引き起こし、結局は家計の負担増につながったとの研究結果もある。
法人税率の引き下げにも不透明な部分がある。法人税率を大幅に引き下げても、人件費や人材のミスマッチ、サプライチェーンの未整備などが要因となり、期待したほど対米投資は増えないかもしれない。
原油価格が下がるかも不透明だ。サウジアラビアなどの産油国が、米国の要請に応じない可能性はある。イスラエルとハマスの戦闘が再び激化し、世界のエネルギー供給の大動脈であるホルムズ海峡が封鎖されるリスクもある。
トランプ政権は減税を進める一方、国債を増発し財政支出が過去の政権を上回るペースで増えるとの警戒感も高い。原油価格上昇と連邦財政の支出増が同時に進めば、米国のインフレ懸念は再燃し、全年限で金利は上昇するだろう。
トランプ氏は2月1日、カナダとメキシコからの輸入品に25%の関税、中国からの輸入品に10%の追加関税を4日から課す大統領令に署名した。これに対抗して早速、カナダの一部州政府は、米国産の酒を店頭から撤去する方針を発表した。また、中国の商務省は世界貿易機関(WTO)に提訴する方針を示している。
米国の強硬姿勢に対して、各国が対抗し、報復措置を実行すれば、まさに貿易戦争である。世界経済の先行き不透明感は高まり、主要投資家や企業経営者が米国向けの投資を増やすことは難しくなるだろう。わが国経済にとっても重大なマイナス要因になることは間違いない。